「どうやら利口な会話をすることができるのはあなたのようですね」

私は加持さんと話を続けていた。葛城ミサトは留置施設の外に強引退室をさせられていた

「シンジ君の遺志。君はそんな爆弾を背負っていくだけの覚悟があると?」

「ええ、それが彼の最後の遺言ですから。与えられた仕事はします。彼のためにも」

私はもう碇シンジではない。そんな人間が存在するはずがないのだ

『トントン』

加持さんは今日はお客さんが多いようだと言うと扉の鍵を解錠した
扉の向こうには渚カオルがいた。忌まわしき過去を思い出す。最後にとどめを刺してくれたのだから

「少し良いですか?」

「勝手にすれば。私は何も語るつもりはないわ」

渚カオルの言葉に私は迷惑だと言わんばかりの口調で答えた
加持さんは少しの間、2人だけにしてあげるよと言うと留置施設を出ていった

「初めましてかな。渚カオルです」

「今はエヴァのパイロット。でも少し前は使徒だった。彼に最後の絶望をあたえた」

「シンジ君は自らの望みを果たしたのかな?」

「彼はきっと後悔しているわ。救う価値のない人間ばかりを救ってしまったと」

私の言葉に渚カオルはそれはそうだねと答えた
どうやら彼は自覚があるようだ。どれだけひどいことをしたか。
あの儀式の中で最も罪深いことをしたのはネルフとゼーレの関係者だ

「仮にそれがシンジ君の遺志だとしても、なぜ止めなかったのか教えてもらえるかな?」

「それが彼の遺言だから。託されたことは引き継ぐべきものなのだ。どんなに残酷な告知でもね」

「シンジ君は僕のことについて何か言っていたかな」

「すべてはあなたが最後の扉を開けたと聞いているわ」

私があんなことをしたのは人を信じすぎたからだ。
少しでも状況が変わっていたらまた別の選択肢もあっただろう
だがそんなものを今考えても仕方がない。私にとってはあまり相手にしたくない相手だ
あの儀式について知っている人間と会話をすることは望ましいことではない

「否定はしないよ」

「他のネルフ所属のチルドレンとは違うみたいね。それで話は何かしら?」

渚カオルは冷静に話しかけてきた。
彼は自らがどれほどの罪人なのかについて自覚はあるようだ

「君ならシンジ君の遺灰を散骨した場所が分かると思ったから。彼に対して謝罪をしたいんだよ」

「何もかも今更ね。何を言うかと思えば散骨場所を知りたいなんて」

「君は咎人であり続けるのかな?」

私はその言葉に怒りが湧き出しそうだったが。
ここで相手のペースに乗ったらすべてが無駄になる
冷静に対応することが望ましい

「私にはわからないわ。そればかりは天国に行った彼にしか」

私はそう言うとその後は一切話をすることはなかった
元々、会うような連中ではない。ネルフもゼーレも同じ闇が深すぎる組織なのだ