本物の警察官が来てくれたので私は少しは安心できた。
だが問題なのはネルフがどのように動いてくるか
私としては身辺調査で詳細に調べたとしても真実はわからないだろう
『僕』はすでに「私」になっているのだから
大きく異なったことがどのように作用するかはわからないけど、少し時間稼ぎができたかもしれない

「失礼ですが、市警察本部で事情をお聞きしたいのですが?」

女性の刑事さんの質問に私は全く襲われる理由はわからないですと
私の回答を聞くとネルフ関係者と接触されていたとお話をお聞きしていると伝えられた
どうやら彼らはネルフが私に接触したことを知っているようだ
もしかしたらこの女性刑事はネルフと繋がりがあるのかと考えてしまった
そうでなければ刑事さんがそう質問するわけがない

「わかりました。市警察本部にですか?」

私はわざわざそこまで行く必要があるのかを考えた
普通なら状況把握のために関係者から話を聞くのは当たり前だ
だがこの女性刑事は私がネルフ関係者と接触していることを知っている
正解なのかどうかはわからないけど、情報把握については私もしておきたい
ここは素直に了承した方が良いと考えた
下手に拒否をしたら、裏に何かあることを深く探られる可能性は高まるだけだ
大きなリスクになる前に抑え込んでおいた方が、私にとっては安全なのかもしれない
問題が多発することは避けたいのだから当然の判断であると今は考えた
寮の前に止められていたパトカーに乗せられた私は女性刑事と一緒に市警察本部に向かった
パトカーの車内ではどこか緊迫した空気が流れている。運転は制服姿の警察官がしていた。
助手席には女性刑事が乗っていて、私は後部座席に座っていた
一応、『神様の権限』でこのパトカーに乗っている人物の『記録』を確認したが怪しいことは何もなかった
この女性刑事の方もネルフやゼーレ関係の人物と接触したと思われるような『記憶』はなかった
私としてはとりあえず安心できる。問題はネルフが私に何か仕掛けてくるかだ
私の立ち位置ははっきり言ってしまうと微妙である。
過去ばかりは捨てることはできない。
生きてきたその過程の記録を『無くす』ことはできないが、忘れることはできる
今は知らないふりをするしかないのだ。
市警察本部に向かう間に私は女性刑事と話をしていた

「あなたの周囲では何度もトラブルがあると聞いていますが。何か心当たりはありますか?」

「私はただの大学生で教師を目指しているだけです。少しだけスーパーコンピュータの研究をしていたことがありましたが」

もしかしたらその関係で狙われているのかもしれませんと私は回答した
当たり障りない回答をすることでこの場を何とか乗り切ろうとしている
簡単にそんな『苦しい言い訳』で突破できるとは思っていない
時間稼ぎができれば良いのだ。私は何も知らないと思わせることが重要なのだ