私とルミナはイタリア料理店の前に到着した
若い女子大学生ということもあり怪しまれることはまずないだろう
お店に入ると店員が2名様ですかと聞いてきた

「はい。席は空いていますか?」

「空いておりますのでご案内します」

私はさすがは雑誌が取り上げるほどの人気店だと思った
お店の店員の対応なども評価基準に入るから気を付けるところだ
私たちは空いているテーブルの席に座るとメニューを見た
私が頼む料理は事前に出版社から指定されているのでそれを頼むだけですむ
でもルミナさんはただで豪華な食事を食べられることのうれしさからじっくりとメニューを眺めていた
私はメニューを選びながら様々なところをチェックしていた
この判断によっては店のお客の人数に大きく影響するだけに手は抜けない
メニューから選んだようなそぶりでお店の従業員に料理を依頼
それを頼んで待つ間に周囲の観察を続けた

「ルミナさん。好きなメニューを食べて良いんですよ。払いは私が持ちますから」

「でもね。どれもおいしそうで迷っちゃって」

それから少しして食べるメニューを決めたようで注文をした
それと入れ違いに私のところに注文したメニューの料理が到着した
私は慎重に食べながらも、味を確かめていた。ここの今の星は3つ星だ
この店を利用したお客様からの投稿について不審な動きを見せたと
だから私が来たのだ。ルミナさんというデコイを使って
あまり良い方法とは言えないが、雑誌を出版している企業の信用度に関わる問題だ
それだけに細心の注意が必要なのだ
私の前にも2人の調査員が店を様々な角度からチェックしていたが
少し味が落ちているとの評価を下していた
私はその最後の担当だ。私の判断1つで料理店の命運が決まるだけに気は抜けない
味は以前は深みがあったのだが今回はそれが薄れていた。
少し何かをごまかしているかのように感じられたのだ

「おいしいわね。カオリ」

「ええ、その通りね。雑誌の評判通りで」

私はあえて雑誌の評判通りと話した

「当店は洗練された食材を使っていますのでご満足いただけると思います」

厨房からシェフが現れてそう言った

「いかがですか?」

「おいしくいただいています。さすが料理本の格付けに載っていると思います」

私はそれとなく話を合わせながら店内の空気を探った
小さなミスも許されない。立場が漏れるわけにもいかない。
難しいものだけどしかたがないと私は自分を納得させて話をつづけた
私はしっかりと味の評価をつけながら食べていた
完食するとルミナさんと一緒に退店した

「どうでした?」

「私は満足だったけど。カオリは違うって顔をしているわよ」

「仕事ですから」

私としては以前に訪れた時に比べて味が落ちたように感じられた
そのことを出版社にレポートとして報告したらお仕事完了だ