保健室から職員室に戻ると先輩先生たちからは心配しているような視線を受ける事になった
あまり好きではないのだが、仕方がないと言えばそうなのだ
撃たれたのだから、平然としている方が問題だ

「水川カオリさん、大丈夫ですか?」

ある女性教師が私のことを心配して声をかけてきた

「ご心配をおかけしました。大丈夫ですので問題ありません」

「大変ね。噂で聞いたけどネルフから勧誘を受けているって」

「そんなのは噂ですよ。私は教師を目指しているので」

「でも大学では成績トップで通っていると聞きましたよ」

どうやら外堀から埋めようとしている連中がいるようだ
そんな奴はできれば潰したいところなのだが、あまり派手に動くといろいろとまずい
ここは冷静な対応が求められるところである

「そういえば大学では図書部に在籍していたそうですね」

この女性教師は第三新東京市立大学の出身だったようだ
図書部は大学でもかなりマイナーな部活だ。知っている者は少ないほどに
下手をすれば図書部という部活そのものがある事を知らない大学生もいるくらいだ

「はい。静かな図書部が好きなので」

「よければこの高校にも図書部がありますので顔を出してみてはどうですか?」

私はその誘いに興味をかなり示してしまった。
ここの高校にはどんな本が所蔵されているのか興味がかなりあるからだ

「良いんですか?」

「大学ほど蔵書はそんなに多くないけど、図書部に在籍していたならあなたの力を発揮できると思うんだけど」

私は断る理由はこの時点では何もなかったので問題ありませんと答えた
高校の図書室にある本を読めるなら、ある意味では『逃げる』ことができるからだ

「放課後に図書室に来てもらえると助かるわ。それに司書の資格を取ることも目指しているのよね?」

そう私は司書の資格についても取得を目指している。
本が好きだし読書が好きなのだから当たり前と言えば当たり前なのだが
図書部の部員であり図書委員会の委員も務めているので司書の仕事の内容はわかっている
あとは必要な資格を取るだけだがいろいろと難しいものなのだ。
覚える事も多い事もあるので

「喜んで行かせてもらいます。放課後で良いんですよね?」

「ええ、それとちょっとあれなんだけど蔵書の整理も手伝ってもらえるかしら?」

「良いですよ。本を探したり整理したりするのは好きなので」

そう、私は図書部の部室に多くの本を書籍棚に『借りている』のだ
だから図書委員会のブラックリストにも載せられている
返却が遅れるとすぐに催促の電話かメールが携帯電話に来るのだ
大学の寮の自室にある本棚には多くの書籍が並べられている。
ジャンルはいろいろだ。古文から現代のものまで幅広く読んでいる
収まりきらない本が本棚の前に積み立てられていたりしている
ルミナさんからはもっと整理したらとよく言われている
私はキャパオーバーなのだといつも言っているが言い訳としては下手よと指摘される

「それじゃ、放課後に3階の図書室に来てくださいね」

「はい」

女性教師はそう言うと私のそばから離れていった。
今度はルミナさんが近づいてきた

「本当にカオリって読書中毒ね」

「好きなものは好きなので」

「大学で読書中毒って呼ばれているのはカオリだけよね」

ルミナさんは茶化すかのように言うと次の授業に行きましょうと言って一緒に教室に向かった