私と渚カオルは車の影に隠れていたが、
狙撃犯はよほどこちらを殺したいのか次々と弾を撃ってきている
「まったく、どうして人間は彼が叶えた安定の世界を喜んで受け入れないのかしら」
私がそういうが、これは『僕』としても同意見だ
『僕』は世界が安定してくれることを願って元に戻したはずなのに
世界のごく一部の人たちは受け入れる事を嫌がっている
まったくもって迷惑な話だ
「ところでネルフの保安諜報部は仕事をしないのかしら?」
「僕が少し2人だけにしてほしいとお願いしているので」
つまり護衛に戻るには少し時間がかかるという事だ
それはそれで助かると言うべきか面倒と言うべきか
微妙なところである
「あなたはもう少し自分の希少性を理解する事ね」
エヴァのパイロットなのだから狙われることはわかっているはずだ
ましてや渚カオルはゼーレの関係者だ。いつ狙われても不思議ではない
おまけにこの辺りは何者かによってジャミングがかけられているのでは携帯電話での通報もできない
困ったものである
「仕方がないわね。自衛権を行使するしかないみたいだし」
私はポケットからあるものを取り出した
渚カオルはそれを見て驚いていた
「内緒にしてね。こんなものを持っている事が分かったら面倒だしね」
「それは手榴弾ですよね」
「そうよ。あなた達ネルフに狙われはじめたから武装したのよ。このことも内緒ね。私とあなたとの秘密」
本当なら手のうちを見せるのは好ましい事ではないが、
今、この状況を打破するには仕方がない
私は安全ピンを抜くと車の下に放り込んだ
そして彼と一緒に大急ぎで別の隠れる事ができる場所に離れた
車が爆発したらさすがにあちらも手を引くだろう
さらにネルフ本部の保安諜報部の護衛担当も動きやすい事を計算に入れての行動だ
「まったく警護体制はもっとしっかりしてもらいたいわね。私に全責任を押し付けるみたいなことは嫌なんだけど」
私は愚痴るかのように言うとようやく渚カオルの警護担当者が次々と完全武装で出てきた
「それじゃ、私はこれで失礼するわね。警察にはあなたの方でうまく言っておいて」
「それは僕が呼びだしたから責任を取れという事ですか」
理解が早くて助かるわというと急いでその場から撤収していった
私はそう言うとすぐにその場から離れていった。
警察騒動に巻き込まれるのはごめんだからだ
私は展望台から走って逃げだすと大通りに出る
そこでタクシーをひろって大学の寮に戻ることにした
ただ、これで渚カオルに貸しを作るようなことになったことは少し後悔していた
できる事なら彼らとは距離を取っておきたいからだ
内心では私は嫌な展開になりそうだと感じていた