高校の近くにある喫茶店に入ると私と加持さんは相変わらず腹の探り合いをしていた
休憩したいのにこれでは休みたくても休めない。
まったくもって困ったものだ

「それで何を知りたいんですか?」

「君の過去を少し調べさせてもらったよ。かなり空白があるみたいだね」

「私も覚えていない事が多すぎて、今は新しい人生を送るつもりで生活をしているので」

すると加持さんはそれなのにシンジ君と出会ったのは偶然なのかなと
なかなか厳しい所を追求してきた
私は真実とウソをうまくミックスさせて話を合わせた
でも加持さんにはどこか心の中を見られているような感じをした
だからこの喫茶店を出たいと思ったのかもしれない。一刻も早く
私はもうネルフやゼーレに運命を握られる窮屈な生活などしたくない
自由になりたいのだ。広い世界をまるで鳥が羽ばたくかのように
この広い大空を。ネルフやゼーレがいない世界を望むのは難しいのかもしれない
でも私には大切な友人がいる。私が『碇シンジ』ではなく水川カオリであることを証明してくれる
だからこそ戦うのだ。私自身のためにも

「あなただけは迷惑な存在ですね。私は碇シンジ君の遺志を継ぐ者に過ぎない」

「その遺志の内容をすべて話してくれると助かるんだけど?」

「あなた方ネルフに知る価値があるかどうかを判断するのは私です」

「ネルフはすべて知る権利はないと?」

「ええ、ネルフだけでなくゼーレも同じです。あの地獄のような状況を知る権利は誰もいない」

「君にどう説明したのかな。シンジ君はどうしてそこまで君を信じたの教えてくれない?」

「彼は人が死ぬような結末を迎える事を望まなかった。でも私はそれを支持しただけ」

別に彼らに真実を話してやる義理はないのだから
私はそう言うとコーヒーを飲んでもう失礼しますねと言って席を立とうとした

「もう1つだけ質問しても良いかな?」

「なんですか?」

「シンジ君は納得して自らの人生に幕を下ろしたのかな」

「彼はすべて納得済みで自らの人生にけりをつけた。それだけは事実」

私はそう言うとごちそうさまでしたという事を示すかのようにコーヒー代を置いて喫茶店を出ていった
喫茶店の近くにあるバス停に向かうとバス停に私が到着するのとほぼ同じタイミングで市バスが到着した
バスに乗り込んで大学に戻る事にした。休日なのだから大学付属図書館の図書部室でじっくり読書をしたい

「まったく苦労が多いわね」

バスでゆっくりと座席に座って第三新東京市立大学に向かっていた
もう私には戦う理由など存在しないはずなのに、あちらからやってくる

「本当に嫌な人生ね」

バスの座席から見える外の風景を眺めながらそんなことをつぶやいていた
もう後悔を感じる人生など送りたくない。自分にとって満足できる人生を送りたいのだ
たとえそれがどんなに悲惨なものであっても。納得している