寮の自室に戻った私はとりあえずレポートの作成に取り掛かった
いつもの事なので慣れた事である。もう私は大丈夫である

「平和ね」

私はそんなことをつぶやきながらも両親の事を考えていた
ここのところずっと心配をかけているばっかりだ
できる事ならそんな情報が洩れる事は嫌だったのだけど
この街での保護者代わりをしてくれている高波教授としては連絡しないわけにはいかないのだろう
だって保護者なのだから、何かトラブルがあれば連絡を伝えなければ意味がない

「ちょっとバイクにでも乗ってこようかしら」

私はスポーツバイクを持っている。もちろん免許もあるんで問題ない
気晴らしに走ってくるのも良いだろうと思った

「たまには乗りましょう」

私は寮の自室から出ると駐輪場に止めているバイクに向かった
もちろんグロック17を隠し持っていった。いつ狙われるかわからないからだ
ヘルメットを装着すると第三新東京市が一望できるあの展望台に向かう事にした
どうしてなのかはわからないが、私は心のどこかで束縛されているのかもしれない
あの場所にはいろいろな思い出がある。良い思い出もあるし悲しいものある
交通ルールを守りながら展望台に向かっていく。
寮からあの展望台までそれほど離れていないのですぐについた
すでに時間は夜である。第三新東京市の高層ビルのライトがきれいに見える
もうあの時とは違うのだ。使徒が襲ってきたころとは
平和になったはずなのに、私はネルフやゼーレから狙われている
嫌なものだ

「ここから見る景色は変わらないわね」

私は展望台から見える景色を見ながらそうつぶやいた
もうあの頃とは違うのだ。あの、自分の意思ではない、他人に強制されるような人生とは違う
あの頃は何のために生きているのかわかっていなかった
だが今は違う。今の私には家族がいる。私であることを認めてくれる大切な家族が
だから少しは迷う事があるかもしれないけど、自分の意思で道を選択する事ができるのだろう
他者から強制されるのではないこと。それが最も重要な事なのだ
未来を見ながら生きていくことが大切である

「まったく、良い思い出なんてないわね」

ここから見る景色についてはそう言える
良い思い出があったといえば最初だけである
他の思い出は良いものではない。つらい思い出ばかりしかない

「少し良いですか?」

突然後ろから声をかけられて私は驚いて振り返るとアスカがいた
できるだけ教育実習先の高校では接触しないようにしていた
ネルフ関係者とは。もうあの中学時代とは違うし私はもう大学生なのだ
私が碇シンジであるという事はわからないだろう。気づくはずがないと思っていた
いや、思い込んでいたのかもしれない。だから振り返ってアスカの顔を見て私は驚いてしまった

「確かアスカさんですよね。こんな時間に何をしているんですか?高校生はもう外出している時間ではないですよ」

「それはわかっていますが、あなたが私達と接触してくれないので時間を作りました」