私はとりあえず気晴らしにドライブに行くことにした
もう彼女と話すことはない。何もかも終わった事なのだから
だから、もう何もいらないのだ。ただ、アスカさんをこの展望台に置いていくのもあれだと思った

「自宅まで送るわ。私の後ろに乗りなさい」

「良いんですか?」

「未成年者が保護者もいない状況で放置したらいろいろと面倒だし。今回だけよ」

私はもう1つのヘルメットを取り出した。普段はルミナさんが使っているものだ。
たまにルミナさんと一緒にバイクでドライブをすることがあるのでヘルメットの予備を常に持っている
アスカはヘルメットを装着すると私のバイクの後ろに乗り込んだ

「それじゃ、行くわよ」

私はバイクのエンジンをかけると展望台から離れて彼女の家に向かった
住所は事前に聞いているのでわかっている。
私は法定速度を守りながらも尾行されている事に気づいていた
ネルフの保安諜報部の車であることは容易に想像できた
アスカはエヴァパイロットなのだから身辺護衛がつくのは当り前だ
実はあの展望台で彼女と会った時から監視の視線は感じていた
でもあえて知らないふりをしたのだ
私はただの大学生なので、戦闘のプロと思われるわけにはいかないからだ
戦闘のプロと言っても知識としてだけ知っているだけで、
実際に戦闘をしたことはないので体がそれに対応できるかどうかはわからないが
時にはいろいろと強引な方法を使わないと対応できない場面も出てくる

「まったく困ったものね」

私はアクセルグリップを回して速度を上げた
後部座席に座っているアスカさんは私にギュッとつかまってきた
初めて乗るバイクに驚いているのかもしれない
展望台から降りてある交差点の信号待ちで赤信号だったので待っていると嫌な予感がした
私は人の悪意を感じ取るのが得意なのだ。
とっさに私は左右の安全を確認すると信号無視を覚悟でアクセル全開で突っ切った

「何を考えているんですか!?」

「あなたが自分の価値をわかっていないからこういうことになるんですよ」

私のバイクが停車しているところに黒のセダン車が突っ込んできていた
狙いはどちらなのかはわからないが危険な連中であることには間違いない
どうしてこうもトラブルが連発するのかと内心では思いながらも全速で道路を走行していた
私はアスカが必死に捕まっている事が分かっていた

「アスカさん。少し緩めてくれない。腰が痛いんだけど」

「でも怖いのよ!」

「ネルフで使徒と命のやり取りをしていたあなたがこんな事に怯えるくらいなら、今後は行動を自重してください」

私は冷静に冷たく突き放すように言う
だがこれは事実である。こんなことになる事は想像できたはずだ
それに何度も言うようだがネルフの護衛体制も甘い
大切なら外出時は徹底的に護衛をつけるようにしてもらわないと、
貴重なエヴァパイロットを失う事になる事を理解しないといけない