まだ早朝という事もあって市内の交通量は少ない
私は後ろにルミナさんを乗せて市外の方向に向かってバイクを走らせていた
行先はとある場所である。向かっているのは郊外に整備されている墓地。
そこにはある人物の墓がある。そう、『碇シンジ』の墓だ
『僕』は死んだことにするには形だけでも墓地を作る必要があった
だって私が『碇シンジ』と気づかれないようにするためにはそうする必要性があった

「碇シンジ君ってネルフが探している英雄よね?彼が何か関わりがあるの?」

「ネルフが流している事のほとんどは偽りの事実に過ぎないんです。だから自ら幕を引いた。私に遺言を残して」

「カオリに遺言を残して?」

「私は責めを負う覚悟はできていたから引き受けた。だからネルフや反ネルフの組織に狙われるんです」

私は嘘を上手く混ぜながら説明した。まぁほとんどが嘘なのだが
だが今後の事を考えるとルミナさんにある程度話をしておく必要があった
もしかしたらまたしても迷惑をかけるかもしれないからだ
それを考えるといろいろと交錯する事が求められたのだ。
ただしそれをするには盗聴の心配がない場所
となるとこの場所が最も最適であった。墓地で盗聴をする人間はいないからだ

「彼は何を言い残したの?」

「それは知らないほうが良いと思います。ルミナさんは私と同じように命のやり取りをすることになるから」

「カオリはそれで満足しているの?」

「納得しているから話をしているんです。こんな私でも本当についてきてくれますか?」

私はルミナさんを試していた。本当の意味で『親友』になれるのかどうかを
心のどこかで不安を感じていたのかもしれない

「カオリ、私はあなたを信頼しているわ。だからどこまでもついていく。例え結末がハッピーエンドじゃなくてもね」

「ルミナさん」

私はほっとした。本当の意味で信頼できる親友がルミナさんでよかったことを感じたからだ
もしルミナさんがいなかったら私は孤独の中で生きなければならなかっただろう
でも今は違う。私達は墓地を出るとバイクに乗り込み市内に戻る事にした
今日は日曜日。予定はないので大学付属図書館で図書委員会の仕事をすることにした
図書館に所蔵されている本の整理である。膨大な量の所蔵本の整理は私は好きだ
いろいろな本を見る事ができるからである
図書委員会に入るからにはどこにどの本が保管されているかをすべて記憶している
これも神様の特権ではあるが、おかげで本の整理整頓は楽な作業である
バイクでルミナさんを後ろに乗せて大学の寮に戻った
とりあえずバイクを駐輪場に戻すためだ

「ルミナさんはこれからどうします?」

「私は図書部の部室で読書をしているわ。カオリは本の整理がしたいんでしょ?」

「わかります?」

「同じ部活にいるから当然よ。私も次に買ってほしい本を選びたいし」

「頑張ってください」

私とルミナさんは一緒に大学付属図書館に向かった