私は作業を終えると図書部の部室に向かった
部室ではルミナさんが読書をしていた。

「カオリ。事務作業は終わったの?」

「とりあえず、一通りの作業は終了したから、部室に来たんですよ」

「そう言えばアイラさんが来ていたわね。また無理な注文を頼まれたの?」

「いつもの事ですよ。アイラさんは購入希望の本が多すぎるんです。だからもっと絞り込むようにと言っておきました」

「あの子には困ったものね。いつも学術本の中でも高価な本ばかりを選んでくるから」

そう、アイラさんはいつもそうだ。購入希望の本は高価な学術本ばかりであること
だから委員長からもっと本を選ぶようにと言われるのだ
私もよく言われるが何とか誤魔化して購入してもらっている
いろいろと嫌味を言われることは頻繁ではあるが。もう慣れてしまった
図書委員の特権だと思えば嫌味も何とか耐えられる
それにネルフの関係者とやりあうよりかは楽勝である

「それで、カオリは何を選んだの?」

「ルミナさん。私はまだ選んでいませんよ。それに提出期限は1週間後。それまでにいろいろと探さないと」

「相変わらずね。お固い事」

「ルミナさんだって時と状況に合わせていると思いますけど」

「順応性が高いって評価して」

それはそうだが。ルミナさんの順応性の高さは折り紙つきだ
上手い事交渉事を進める事については評判がいい

「そう言えば、ルミナさんは何を読んでいるの?」

「これのこと?これはライ麦畑でつかまえて。子供の頃に何度も読んだんだけど、また読みたくなって」

この図書館には漫画はさすがに所蔵されていないが、有名人の長編小説は所蔵されている
そう言った小説の購入希望が意見箱にかなりの量があるので購入時期になると大量になる
第三新東京市立大学には多くの大学生が通っているのだから、図書館の利用者はかなり存在する
だからこそ購入リストを作る時はかなり図書委員会の会議で紛糾する事は毎回の事だ
上手く仲裁する人間がいればいいのだが、実際はそれぞれの欲があるので難しい
私だってほしい本がたくさんあるのでいろいろと苦労しているのだ
ちなみにルミナさんやアイラさんも毎回かなりの購入希望リストを意見箱に出している

「そうですか」

「カオリは子供の頃に何か思い出の1冊とかあるの?」

「残念ですけど私はそういうのはないので」

子供のころから人類補完計画の一部としてしか扱われてこなかったのだから
酷い目にあってきた人生だ。ルミナさんが今読んでいる文学にはあまり興味がなかった
今は別だけど。とりあえず私はルミナさんに先に寮に戻りますねと伝えた
寮の自分の部屋で次に購入してほしい本のリストをまとめなければならないからだ