「シンジは本当にそれを望んだんですか?」

アスカさんはどうも納得できていない様子だった。
彼女にとって碇シンジは本当の意味で友人ではなかった
彼女は自分を見捨てたという考えを少しだけだが持っていたことを知っていた

「彼はサードインパクトの事実を知っている。その中で見た地獄を経験したからこそ、ネルフなんて嫌になったのよ」

「1つ聞いても良いですか?」

今度は渚カオルが質問をしてきた

「しつこい質問は嫌いだからそのつもりで言葉を選ぶように」

「シンジ君はどうして僕を蘇らせたのかな?」

「すべては公平であるべきだから。彼ならそう言ったでしょうね」

そうだ。『僕』が彼を蘇らせたのは公平であることを望んだからだ
誰かの生死を決めるのは私の判断ではない。人類補完計画で犠牲になった人たちを救った
それだけの事である。法の下に裁かれるべきだと考えたのだが
実態はきれいごとのようには物事は進まなかった
ネルフが好き放題にできる状態にしてしまっただけに過ぎない
今更何を言ったところで言い訳に過ぎないのだが

「とにかくお墓の場所を教えたあげただけでも感謝してよ。本当なら静かに眠らせておいてあげたいから」

本当は教えるつもりなどなかったのだが、仮の墓標ではあるけど
あまりにしつこいので妥協案というか交渉術というべきか
仕方なく教えてあげたのだ
これでもし私にトラブルの種が飛んでくることになるなら
こちらにもいろいろと抵抗するだけの材料を持っている

「碇シンジ君は正義が実行されることを望んでいたのにネルフが邪魔をした。あなたたちが自分勝手に正義の味方」

そんな事を主張したために、彼は絶望したと私は冷たく突き放すかのように言った
事実なのだから文句は言えないはずだ。
特に碇レイさんと渚カオル君は人類補完計画の中心人物だったのだから

「厳しい意見ですね」

「私は事実を言ったまでよ。あなた達の身勝手が彼を追い詰めた」

だから自殺の運命を選んだのよと伝えるとちょうど昼食を食べ終えるところだった

「話はこれでおしまい。もう私はネルフと関わるつもりはないわ。汚れきった組織に協力する義務はないから」

それでは失礼しますというと私は教室を出ていき職員室に戻っていった
まったくもってネルフは迷惑な組織だ。自分勝手に正義の味方を主張している
特に許せないのが碇ユイと碇ゲンドウ。2人は結末をある程度予期していたはずだ
なのに自らの理想。いや、自分勝手の理論を実証するために大勢の犠牲を生み出した
そんな彼らに協力なんてしてやるつもりなんて私にはなかった。ため息をつきながら歩いていた。
職員室に戻りルミナさんの隣のデスクに座ると、彼女に問題山積って顔をしているわよと言われた

「どうしてこうも面倒な事に巻き込まれるのか私も聞きたいですよ」