「ユイ、彼女には接触しないように伝えたのだが」

夫の言葉に私はわかっていますと答えるしかなかった
ゲンドウさんだってそんなことはわかりきっている。全て今更なのだ。
娘であるレイちゃんから教えてもらった墓地の墓標には確かに碇シンジの名前が刻まれていた
私はそれを見て後悔しか出てこなかった。何もかもを壊したのが私であることを実感させられた
遺骨もない、ただ名前だけが刻まれた墓標。
まるでそれが私が人殺しであるという事をはっきりとさせているかのようにわからせるために
ただ、それだけをはっきり意思表示をすることを目的に存在している
私がすべていけないのだから

「彼女は民間人だが念のため警護をつけた」

「良いんですか?」

私はゲンドウさんがカオリさんに警護をつけたことに驚いた
まだ確かな証拠がないのに。憶測にすぎない領域しかない
それでも夫であるゲンドウさんが動いたとなると少しは情報が集まるだろう
私にも今回の大学で狙われたのが私ではないことは予想できていた
狙いはおそらく水川カオリさん。彼女であることはわかっていた
問題はなぜ狙ったかだ。動機が分かれば新たな脅威が分かるかもしれない

「ユイ。今は彼女に接触しないでくれ」


-----------------------------------

警察での事情聴取を終えると私は大学の寮に戻った
どうやら警察側でも私関係で狙われている事を捜査しているようだ
ますます状況が良くないことは間違いない
ネルフだけでなく警察からもにらまれるというのは私の行動が制限されるのと同等だ
もし銃を隠し持っているという事が分かれば彼らは立件する事を目指すだろう
だがこちらにも最後の手段というのもある。あまり使いたくない方法だが
ネルフに逃げ込むという事だ。特務機関であるネルフに入ってしまえば警察も手が出せない
ただしこれはあくまでも最後の手段だ。私としてはこれは絶対に使いたくない
ネルフに情報を提供するのと同等なのだから
寮の自室に戻ると私はベッドに横になった

「最悪の状況ね」

本当にその通りだ。どうしたらいいのか私でも判断できない
とりあえず新しい銃を入手するしかない。リナさんにお願いをして早急に用意してもらおうと
今の私は神様ではなく人間なのだ。間違ってもATフィールドを無造作に使うわけにはいかない
銃で応戦するしかないのだから。とりあえず私はシャワーを浴びるとパジャマに着替えてベッドで眠った


-----------------------------------

第三新東京市中心部 コンフォート17マンション 碇家の家

ここには碇ゲンドウと碇ユイ。そして碇レイと渚カオルが一緒に住んでいる
私は渚カオルと話をしていた

「水川カオリさんが教えてくれた墓標に行ったんだってね」

カオルにそう言われて私は一応行ってみたのと答えた
私にとって碇君とのきずなは大切なのだ

「唯一のものだから。碇君との唯一の絆」

私は墓標がある事に内心ではショックだった。碇君が死んでいる事をまざまざと見せつけられたからだ
でもわからないことがある。水川カオリさんが本当は碇君の生まれ変わりなのではないかという事だ
私は疑っていた。何かの意図があって我々と距離を取っているのではないかと
だからこそ高校でも私達とはあまり接触する事をしないのではないか