彼女の旅館の前に着いた頃にはもう夕日が落ちていた。
あたりは暗闇が降りていたが旅館の明かりがこちらを照らしていて安心できた。
彼女はまるで死んだように眠っていた。あの展望台を出てからしばらくして眠り始めた。
心の闇を私はあのときに少しだけだが理解できた。おそらく、しまいきれていないのだ。なにもかも

私は彼女を車の助手席に置いて旅館の受付に行くと青い顔をしたご両親がすぐに「カオリは!」と言われた
事情を話し彼女が今は眠っていることを伝えると彼女のお母さんがこう言った

「ごめんなさい。あなたまで巻き込んで」

その言葉に私は彼らが何かを知っていて、おそらく彼女のことも知っているのではないかと推測したが今はどうでも良かった
それよりもカオリちゃんを彼らに返す事を優先した。彼女を迎えに行こうとしたときドアが開き、青い顔をした彼女が立っていた
私は眠っているとばかり思っていたので驚いたが彼女は母親に抱きつくとすぐに泣き始めた
その光景は小さい子供がする行動と同じだが、一人で寂しかったのだろうか。私は彼女をやはり起こすべきだったかと後悔をした
そのまま彼女は泣きつかれたのか眠りについた。彼女の父親であるコウスケさん今日は泊まっていかないかと言ったが。
私は丁重にお断りした。母親のユミさんもあの子と一緒に居てあげてもらえないかしらと言われたが。
こういうときは家族と一緒のほうが良いですよと私は返した



私はいつでも彼女と会えるのだから、

そう心の中で思いながら

買い物の荷物を彼らに渡すと私は自らの自宅に車を走らせた。
もう辺りは暗闇というカーテンが下りていたがいつも通る慣れた道なので何事もなく帰った


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自宅は展望台の近くの丘の上にある。車を自宅の前において降りたときなぜか人の気配をした
ここの周辺は誰も住んでいないしこの辺の住人がこんな遅くに訪れる事はない。

「ゼーレか、ネルフか」

私は自分にしか聞き取れないような大きさでそう呟いた。ネルフにとってゼーレ側の人間は断罪しなければならない
だが、自分がゼーレであることは記録には残っていないはずだ。
私は周囲を警戒しながらも自宅の玄関の鍵を開けようとしたとき後ろから足音が聞こえた。
すぐに振り返ると一人の女性が立っていた。
手に黒い金属性のものを持ちそれを私に向けながら

「元ゼーレ特殊部隊所属」

「不思議な経歴の持ち主ね。写真家の相葉ユウさん」



そこに立っていたのは今日彼女を救ったはずのルミナさんだった


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私は周囲を警戒しながらも自宅の玄関の鍵を開けようとしたとき後ろから足音が聞こえた。
すぐに振り返ると一人の女性が立っていた。手に黒い金属性のものを持ちそれを私に向けながら

「元ゼーレ特殊部隊所属」

「不思議な経歴の持ち主ね。写真家の相葉ユウさん」

そこに立っていたのは今日彼女を救ったはずのルミナさんだった



彼女は銃をこちらに向けながら少しずつ近づいてきた。
私は彼女がなぜ自らの過去を知っているのか、そして彼女はこれから何をするつもりなのかという事を考えていた
もし彼女がネルフの構成員だとしても彼女を助けた。その時点でそれは成立しない。
だとすれば今ネルフと仲の悪い組織は一つだけだ。
ネルフ監察局。表向きネルフの特務権限悪用を阻止するために設置された国連直属の外局。
ただ通常の外局とはまったく異なりネルフの権限を取り消す事さえ可能な強力な機関。設立当時から黒い噂が流れていた
本当はネルフと共謀しすべての事実の隠蔽工作をしているのではと、ネルフの外局などと揶揄されることもしばしば
実際は監察局は不公正な命令の取り消しを行っておりこれらの噂はネルフが流したものと考えられている



「あなたがなぜ彼女に接触したのかいろいろと調べたわ」

「あなたの目的は何?」

「なぜ、彼女と関わるの。元ゼーレのあなたが」

銃を向けながら私に言葉を発する彼女はまるで審判の代理者のように私は感じられた
かつて自分の行ったさまざまな所業。それは人として、あるまじき行為。
自分の中ではいつかは罰せられるとそういう思いがあった。

「僕は彼女を愛している。それとゼーレはもう嫌いだ」

「そんな上っ面だけの言葉を信じろって言うの。一度ゼーレに染まった人間が」

「苦し紛れのいいわけだが、もう組織を離れて何年も経つ。それともし彼女を殺すならもうとっくにやっている」

「でも信頼させるのに時間がかかった。そういう可能性もあるでしょう。ゼーレなら彼女を利用しようと考えるはず」

「君が彼女の何を知っているのか分からないが、僕はどんな事があろうと彼女を愛している」

私は彼らとはもう関係ない彼女に言うと歩き始めるために足を一歩出すと彼女はこういった

「何が愛しているよ。彼女を壊そうとした奴らの仲間だったのに!」

その直後私の足元に弾痕ができていた。

「世界を救いきれずに泣き続けているあの子を知らないくせに!」



それはこころからの彼女の悲鳴だった
私は何も知らなかったのだ。彼女の事も、

そして

この世界の事も