夕方まで砂浜で過ごしていたが、さすがに陽が落ちそうになると帰る事にした
今までは1人ボッチだったが今日からは違う。ユウさんと一緒だ
でも懐中電灯をつけて歩道を歩いていた。
「カオリちゃんは本当にきれいだね」
「そうですか?」
私にはあまり自覚がない。自分の今の姿は罪のあかしだと思っているからだ
確かに誰もが私のことを綺麗とか美しいと言うが私にはそれが分からない
それは自分が元男だからなのかもしれない。女性にはあまり関心のない男の子として育ったから
ただ、少しづつではあるが考えが変わりつつあることは自覚していた
それはユウさんと今の家族の愛情を感じているから。そうかもしれない
「ところでユウさん。私のことを本当に愛してくれているんですか?」
「そうじゃないと君のことをここまで真剣に考えないよ。君は美しいしとてもやさしい。だから好きなんだよ」
「優しいですか?」
「そうだよ。君はやさしい。彼女たちに会わないというのもこれ以上真実を知らせないようにするため」
違うかなと彼は言ってきた。確かにそういう面も全くなかったと言えばうそになる
自分の事は忘れて前に進んでほしいと思ったことは1度や2度はあるが
確かに過去は捨てる事はできない。でもそれを糧にして生きていくことはできる
だから『僕との記憶』を糧にして成長してほしいと思ったこともある
「少しくらいはありますよ。でも、今はもうそんなことは考えるつもりはありません」
そう、ルミナさんを撃ったのだからそんなやさしさは捨てるつもりだ。
私の大切な人を奪うなら私も奪いたいと思いたいが、もうあの街と関わるのはやめると決めたのだ
だからこの町で静かに暮らしていくのだ。平和に、この町の優しい人たちと。そして数多くの動物たちと共に
動物たちとは旅館に住み着いているネコさんたちの事だが。彼らも大事な家族だ
私にはそれだけあればもう贅沢な事は言わない。ここで静かに暮らし。
そして見守っていくのだ。この世界の歩みを。それこそが私に課せられた重大な使命なのだと考えていた
そんなことを話しながら自宅の旅館に到着すると午後5時ごろだった。少し早いが夕食の時間にすることにした。
食堂で食べようと思ったがお母さんが今日は混雑しているから部屋に持ってきてくれると言ってくれた
私はありがとうと感謝の言葉を言うとユウさんと一緒に別館の部屋に戻った
「良かったら一緒に食べない?」
ユウさんがそう言ってくれた。1人で食べるよりも楽しいと思うよとの配慮からだった
私は喜んでお願いしますと言った。しばらくするとお母さんとお父さんが私とユウさんの夕食を持ってきてくれた
初めて自分の部屋でほかの人と食べることになった