海岸の町 旅館の中庭

私はネコさん達のお相手を終えると自分の部屋に戻り掃除を始めた
掃除をある程度終えると金庫を開けて銃の手入れを行った。ユウさんに言われたのだ。
銃の手入れを怠れば死が待っていると。私は『死ぬこと』はないが、世界に影響が出る
だから自分を守るためには必要なのだ。でも私は守られているばかりだ
まるで鳥の巣から羽ばたこうとしない鳥のように親鳥に守られている。そんな風に感じる
でも、そんな私でも今は良いと思っている。間違っていたら、謝って道を変えればいい
そうして、いつかは巣立っていくのかもしれない。でも私にはまだ巣立つだけの勇気はない
今はこの海岸の町という名の鳥の巣で、居心地よくいる方が良いと思っている

「今日は何をしようかな」

私はある事をしようかなと思った。それは海の中を泳ぐスキューバダイビングだ。
もちろん私は資格も持っている。ちゃんとこの町にあるダイビング学校で学んだのだ
その時に一通りの機材をお父さんは買ってくれたので、物置きに保管してもらっている
実はこの旅館、下に降りられる階段がある。もちろん知っているのはこの旅館の関係者だけだ。
裏口を使って行かないといけないので宿泊者は知る事は無いし見る事もできない。
さらにこの旅館の下には小さな鍾乳洞があり、ダイビングスポットとしてはちょうどいい深さと長さを持っている
私は部屋で水着とスプリングタイプのウェットスーツを着用。上から服を着て隠すと部屋を出ていった

「今日は久しぶりに機材を点検して、良かったらやってみよう!」

私はお父さんがいる受付のカウンターに行くと、機材を出してもらうようにお願いした。

「お父さん。ダイビング用の機材、出してくれる?」

「久しぶりにダイビングに行くのか?下の鍾乳洞にでも」

「うん!少しくらいなら良いと思って。それにたまには下の鍾乳洞に潜るのが好きだから」

お父さんはすぐに裏口近くにある物置きに向かった。私もあとについていった。
物置きに到着すると機材を出してくれた

「下まで降ろしてやる。1人じゃ無理だろ」

その通りだ。機材だけでも何キロもあるのだ。
簡単に私1人の体力では下ろせないのでいつもお父さんに下ろしてもらっている
お願いしますというとお父さんと一緒に降りていった。下に到着するとそこにはちょうど砂浜がある。
小さな砂浜だが潜りはじめるにはちょうどいいくらいだ。
私は下ろしてもらった機材の最終チェックをして問題ない事を確認する

「それじゃ、潜ってくるね。1時間ほどで戻ってくるから」

「わかった。なら1時間後にまたここに来るからな。ちゃんと帰って来いよ」

「了解です!」

私は敬礼をして返すと、お父さんはまったくといった表情で頭を撫でる
そしてダイビング装備をすべて装着すると潜っていった。念のためこの鍾乳洞にはロープが張られている。
迷ったりしたときのことを考慮してだ。そんなことはまずないのだが、緊急時のために設置されている。
これもお父さんがしたのだ。お父さんの趣味もスキューバダイビングなのだ。
共通の趣味なのとお父さんの心配症でこのロープが張られている。
別に完全に海水に埋もれる鍾乳洞ではなく上には空気の層が残った半分海水だけに使ったものなのだが
それでも心配らしい。お父さんに愛されていると思えば嬉しい事だが。そんなことを思いながらも私は潜っていった