海岸の町

朝食を食堂でとりおえた私はいつものようにお母さんにお酒の発注をしてくるように頼まれた
私は出ていこうとするとユウさんが車を出すよと言ってくれた。
断ろうとしたがこれも護衛の仕事だよと言われてしまっては断れない。
だから私は分かりましたと言うと外出用の服に着替えた。そしてユウさんと一緒に出掛けた
私は助手席に座って窓から見える風景を眺めていた

「悩みかな?」

「ずっと悩みは絶えないですよ。私はこの先碇シンジの過去を捨てることができないでいるんですから」

「過去は過去」

「そうは言いますけど。私には忘れられないんです。あの光景が。そして、その事実も」

そう私はあの時の光景を思い出してしまう事がたびたびある。あのネルフの事を考えたりしたりするときは特にだ
だからいつもは忘れたふりをしているが。それも最近は効果がなくなってきている。
関わりが増えていったからだろう。だからユウさんに依存するようになってしまったのかもしれない
それはそれで困るようなことにならなければいいと思っているのだけど。だけど今はそうでもしていないと精神的に安定しない
ルミナさんから言われた。私の安定こそ世界の安定だと。その意味を今になって実感している。
だから、相談できる相手ができたことは私にとってはとても重要な事である。
いろいろと話をしながら私達は砂浜沿いにあるいつものお酒屋さんに到着した。
私はおつかいを済ませると、いつものように砂浜に降りていった。
履いていた靴を砂浜に置くと膝下ぐらいまで海水に入り海を見た。

「今日も変わらずきれいだね」

「ユウさん。ほめてもなにも良いことないですよ。私は疫病神みたいな存在なんですから」

「そう思っているのはカオリちゃんだけだよ。この町の誰もが君のことを好きだと思っているんだから」

そんなに自分を嫌な存在だなんて思わない方が良いよと彼は言ってくれたが。私には納得できなかった
いつもそんな感じなのだからしょうがない。こればからは。昔からと言って良いのかどうかはわからないが。
私の心の中にはいまだに碇シンジだったころの気持ちが残っている。それが私のネルフへの思いを微妙なものにさせてしまっている

「ところで、ネルフの動きはどうですか?」

「君への接触を禁じているし、監察局の指示通りに動いているそうだよ。今のところ、この町にちょっかいをかけるつもりはないみたいだね」

私はそれを聞いて安心しましたと答えると海水から出ると靴を履いてユウさんと一緒に道路に戻った。
私達は車に乗り込むと自宅である旅館に戻ろうとしたとき、私の携帯電話が鳴った。相手は自分のことをわからせたくないのか番号非通知だった
私は戸惑いながらも電話に出る事にした。

「はい」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…』

「誰ですか?」

それでも電話の相手は何も喋る事もなく電話を切ってしまった。いったい誰だったのかはわからないままだった

「誰からなのかな?」

「分かりません。きっといたずら電話ですよ」

しかし私はこの時にこんなことを安易に判断したことを深く後悔することになる

「ルミナさんに頼んで逆探知をしてもらう事もできるけど」

「そこまでする必要はないと思います」

ユウさんは私がそこまで言うならと言った表情だったが。どこか不安そうな表情を浮かべていた