昨日の天気の悪さがうそのように今日は雲ひとつない晴天であった。ただ、それは世間一般の人の考え方であった。

私にとっては朝起きてから最悪の報告を受けていたこともあって外の天気と気温にいらだっていた。
それから目の前で座っている女性を見てこれからしばらくの日々を想像し疲れた表情をしていた。

「なに、私がいたらそんなに邪魔なの」

顔を見てため息をつかれた本人は不機嫌そうにそういった。彼女は私の同僚でもあり友人でもあるティア・フェイリアであった
友人といってもこの護衛任務をしてからはあまり会う機会はない。
定期連絡を行う際に本部に戻ったときに会う程度であったこともあり、親しい関係ではなかった。
ただ、私が局長室で彼と話しているときに偶然聞かれてしまってからいろいろと『脅されて』話してしまった。
それからネルフに対してある意味では陰湿ないたずらをするようになった。仕事はこなしているため、クビにはできなかった

「まあ、戦自にこの辺の封鎖も人身移動の臨検も準備万端だからいつでもやってくれてかまわないそうよ」

私はその報告を聞きさらに気を落とさざるえなかった。
ある意味ではトラブルは発生するから後は任せたと取れるような行動である。
戦自による道路封鎖準備が完了しているということはこの辺の基地に出動準備命令が出ているということ

「それで、あなたがこちらに派遣ですか。まるで戦争準備みたいね」

私は席を立つとリビングからすぐ近くにある窓から外を見ていた。
そこからは海が一望でき、なおかつ『彼女』の自宅が見えた。窓に映った私の顔は怖い表情をしていた。醜く汚い顔

「もう、時間はないのですね・・・・・・・・」

私が独り言のように小さな声で言ったがティアに聞こえていたようで、私が思案していた言葉が彼女が続けた

「そうよ。私たちには彼女を守りきれる領域を超えてしまったのよ」

「だからといって、ネルフによる独自調査は承認を得なければ禁止されているはずでは」

「あいつらが黙ってないわよ。ネルフの捜査参加要請があったくらいだから、もうこっちに派遣されてるかも」

ネルフ保安諜報部、かつて保安部と諜報部は別であったが使徒戦後統一された部署である。
その能力の高さは使徒戦後に存分に発揮しているネルフを英雄のように情報操作しゼーレをすべて悪にした。
保安諜報部だけでなくMAGIの力もあったが。さらにゼーレ側の人間の大半を処理したのは保安諜報部であった。
国連や各国政府は指名手配を後にしてごく一部の人間を逮捕しただけで重要人物はネルフによって処理されていた。
その言葉を聴いて私はさらにため息をついた。もはや時間は残っているようには思えなかったからだ。

「守るしかないのね」

私はまだ決めかねていた。彼女を囮にすることに。ただ・・・・・・
ただ、破滅の時計は動き始めた。それに気づいているものは数名しかない。
まだ何も起こっていないこの世界に人々は明日も同じ日々が続くと思い込んでいるだろう。
同じ日が続くはずがないのに。人はどこかで慣れてしまう。事件でも事故でも頻繁に起こっているから慣れてしまう。
だからこそ人は過ちを犯すのだ


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「カオリ」

私は思案に耽っていたみたいで、目の前にお母さんの顔があることに始めて気づいた私は思わず驚きの声を上げてしまった
お母さんはそこまで驚くことはないのにとちょっと不機嫌そうに言う。私はごめんなさいと一言謝ると周りを見渡した。
周りにはもう宿泊客はおらず仲居さんが午後からのお客の受け入れ準備に必死に作業をしていた
またいつもの癖が出てしまったようで、お母さんが苦笑いをしていた。

「今日はお散歩はどうするの?」

「気晴らしに行くから」

私がそう言うとお母さんはあまり良い顔をしなかった。その意味も私は十分理解していた。
たぶん、お母さんには私の行動が大体想像ついているのだと思う。勘はよかったから

「行くならちゃんとお昼を食べてからいってね。倒れたりしたら1週間は外出禁止だからね。わかった?」

お母さんはどこまでも私を普通のこのように扱ってくれる。たとえどれほどの真実が私の中にあるのを知っていても
私がいることでお父さんやこの旅館が危ないことを知りながらずっと居させてくれる。



今は私はただ、感謝するだけだ。
2人と多くの思いが詰まったこの旅館とともに歩めるときを