私とユウさんは砂浜にいた。預かった手紙はカバンに入れてしまった
内容を今読むことなく

「手紙、読まないのかな?」

「今ここで読んだらきっと海に流してしまうかもしれないんです」

「カオリちゃん。君は碇ユイさんのことをどう思っているのかな」

「分かりません。確かに私のことを生んでくれたことは事実ですけど」

そう、生んでくれたことには感謝しているが、結局私を利用するだけ利用したと思っていた
ロクに育てることをせず責任を放棄した。私はそう考えていた

「いまはもう、どうでも良いんです。私はこの町で生きていく。ネルフもあの街も関係ない」

ただ、今はもうこの町で平穏に生きていく。何者にも邪魔されず。
私はもう碇シンジではない。この町でただ住んでいるどこにでも女性なのだ

「ただ、平和に暮らせるだけの普通の女性だったら、幸せだったのかもしれませんね」

「思い出したのかな?」

「わかりません。あの時のことは詳しくはまだ。でも少しずつ思い出せてきています。私のした事の罪の重さも」

「カオリちゃんは何も悪くないよ。罪はない」

「そう言ってくれるのはユウさんだけですよ。他の人は違います」

そう、私のしたことは世界に混乱を蔓延させたこと以外に他ならない。
死者を蘇らせた。それがどれだけ危険な事なのか。当時はまだ理解していなかったが今は分かる
危険すぎる事だ。

「私は愚かな事をした事は事実です。それはあまりに世界に影響を与え過ぎた。その事実は代えられません」

「カオリちゃん」

「罪には代償が必要です。私はきっといつかそれを払う時が」

「カオリちゃん!もう良いよ!君に罪はない!それだけは僕は信じているよ」

「ユウさん」

「当時の君に何があったかまでは僕にはわかる事はできないけど。君はもう償いは十分したはずだよ」

だからもうそんなに自分を追い詰めないでと彼は私を抱きしめてくれた
でも私には償いをしたと言う気持ちはない。むしろ罪悪感だけが募るばかりだ

「いつか時間が解決してくれる。きっとね」

「ユウさん」

時間が解決してくれる。そんなことなど永遠に訪れない事は私には予想がついていた
罪は罪だからだ。時間などが解決してくれることなどはあり得ない。それも永遠に
私はこの罪から永遠に逃げる事はできない。というよりも許されないのだ
けっして。目の前の現実と向かい合い続けなければならない。それが私も宿命だ

「咎人なのは、一生消えない傷です。ユウさん、あなたがどんなに慰めてくれてもそれだけは」

「カオリちゃん」

「でも良いんです!気づいたんです。咎人でもそう思って生き続ける義務があると」

私には世界を見守る義務があると。私は靴を脱ぐと膝下までのところまで海に入ると振り返ってこう言った

「それが私の責任の取り方だと思っています!」