海岸の町、旅館の現場
そこでは鑑識作業が行われていた
「使用された弾はライフルね」
私、ティアが現場の指揮を執っていた。撃たれた場所は旅館から100m離れた場所であることは分かっている
そこには薬莢が残されていた。まるで署名行為のように。素人ではない
明らかにプロの手口だ。
『ピーピーピー』
ルミナから電話がかかってきた。おそらくこちらの状況を知りたいのだろう
こちらとしても撃たれた彼の状況を知っておいた方が良い。その方が今後の対応策がとりやすい
特に彼女の方が心配だ。
「ルミナ、彼の容体は?」
『幸いな事に弾は綺麗に抜けていたから一命は取り留めたわ。ただ、彼女はかなり動揺しているわ』
「さっき局長から連絡があったわ。ネルフについても調べてもらっているけど今のところ動きなし」
『それって本当?彼女を追い詰めるために誰かさんが独断専行した可能性は?』
ルミナはよっぽど心配のようだ。ネルフの暴走を。だがその手の情報は今のところ確認されていない。
これは渚カオル経由で持たされた情報だが、彼らにも動揺が走っているとの情報もある
組織的に動いているとは考えにくかった。
『とにかく私も戻るわ』
「彼女についていなくて大丈夫なの?」
『彼女のご両親がついているから。心配ないわ』
「だめよ。これがデコイって可能性があるわ。この海岸の町から隣町の病院に行かせるためのね。彼女を狙っているのはネルフだけじゃないわ」
そう、ゼーレの生き残りがいる可能性が最近になって疑われ始めたのだ。
以前に比べてかなり勢力は弱まったがどこかで情報を掴んだ可能性は否定できない。
そういった状況下で標的対象の警護を外せば元も子もない
「ルミナ、あなたの最大の関心事は彼女のはずよ。それを忘れない事ね」
今のこの世界には彼女に危険を及ぼす存在が多すぎる
カバーできるかどうかはまさに運次第になっている
もし、彼女に何かあれば世界が動くことに。それだけは避けなければならない
そのために私達の存在なのだから。
「守れきれればいいけど」
私はそう呟くと地元警察と共に捜査には戻った
海岸の町を所管している警察署には数多くの監察局の職員が配置されている
これもすべてカオリちゃんを守るためだ。もちろん砂浜近くにある交番の警察官も監察局の人間だ
完璧だと思われた守りが破られたことは大きな問題になるだろう。すでに戦略自衛隊が部隊を動かしている。
沖合にはこの平和な海岸の町には似つかわしくもないイージスシステム搭載の護衛艦が配置されている
「まさに戦争状況ね」
国内で大災害などを起きてほしくないというのが日本政府の考えだ。
彼女に何かあればただでは済まない。感情の揺らぎですら危険をはらんでいるのだから