隣町の病院 ユウさんの病室
私は昼までずっと病室で過ごしていた。ユウさんから離れたくなかったのだ
ユウさんは朝に少し話した後、検査のためいろいろと忙しそうだった
私もいっしょに行こうと思ったけどルミナさんに止められたのだ。
そのほうが安全だといわれて
「カオリ、お昼を持ってきたわよ」
そうやってお母さんがお昼ご飯として病院の喫茶店で買ってきたのかもしれないが
サンドイッチとコーヒーを持っていた
「食べる?」
「うん」
私はそれを受け取ると封を切って、サンドイッチを食べ始めた
いつもならもっと栄養価のある昼食なのだが仕方がない。それにたまにはこういうのもいいものだ
「お母さん、お仕事は良いの?」
「お父さんがしているから大丈夫よ。心配することはないからね」
でもお母さんは少し疲れた表情を浮かべていた
「何かあったの?」
「どうして?」
「だってお母さん。疲れた顔しているから。また私のせいで」
「違うわ。ティアさんといろいろと今後のことを相談していたの。カオリのことだからきちんとしておかないとね」
「それを私のせいっていうと思うんだけど」
「子供は気にしないの。カオリはちゃんと自分のことを優先にしないと。私たちが必ず守るから」
だから心配しないのとお母さんは私の髪を軽くなでてくれた。少しくすぐったいような表情をすると可愛いわねと言ってくれた
とりあえず、家のことは心配しないでいいみたいだ。本当に危険だったらお母さんはもっと切羽詰まった表情をするから
笑っていられるということはそんなに事態は悪くないということなのかもしれない
「みんな無事だから心配しないで。家も大丈夫だからね。ティアさんが守ってくれるって約束してくれたから」
「ティアさんが?」
「ええ。彼女がすべて手配してくれたわ。警察からその後の対応についても」
「報道とかは?」
「ティアさんが何とかしてくれたわ。あとで何かをプレゼントしておかないと」
私は思わず旅館の風評被害を心配したが。報道も抑え込んでくれたようだ
旅館の『傷』も治してくれたと教えてくれた
「あとはカオリとユウさんが戻ってきたら元通りよ。だから今はユウさんについてあげてもいいから」
お母さんは毎日でもこっちに来るから私に好きにするようにと言ってくれた
私はありがとうというとユウさんと相談してみると返事をした
お母さんはあなたは自分に正直になって生きていくことが大切なのよというと病室を出て行った
それと入れ違いにちょうどルミナさんが戻ってきた
「今回の黒幕についての情報が入ったわ。間違いなくゼーレだそうよ」
「そうですか」
「あなたを守るには盾が必要よ」
「そんなの。そんなの私は望んでいない!私は大切な人を盾にしてまで生きたいだなんても思ってない!そんなの嫌なだけ!」
「でも、そうなるしかない時もあるのよ」
そう。私はだれかを盾にしてまで生きたいなんて思ってない。誰かが犠牲になるのをわかっていて生きるなんて耐えられない
でもルミナさんは現実を突きつけてきた。仕方がないことなのだと
私が住んでいる町の人を巻き込むことだけはしたくない。
静かに暮らしている人に迷惑はかけたくないのだ。だが、進んでしまった時計は戻せない