隣町の病院 中庭

私とユウさんは病院の中庭のベンチに座って話をしていた
それはとても重要な内容だったが病室ではするのは少し嫌だった。もしかしたらという事もあって
病室が盗聴されているという可能性だ。

「ユウさん。偽造パスポートを作れますか?」

「何を考えているのかな」

「私もバカな事を考えているんだと思います。今の私にできる事は世界を守ること。私は確かに神様に近い存在かもしれない」

だから公平に裁こうと思うんですとユウさんに伝えた。つまりだ。直接彼らと接触しようというのだ
どれだけ愚かで危険な事なのかは分かっているが。何も知らずに裁く事はできない
それに彼らが本当にいるなら、私自身で決着をつけるべきだと

「どれだけリスクがあるかは分かっているよね?」

「覚悟の上です。だから頼んでいるです。ルミナさんには内緒でやるつもりです」

きっと彼女はこのことを知れば必ず止めようとするだろう。だけどもう迷うつもりはない
決めたのだ。もう逃げる事はしないと。

「少し時間をもらえるかな。軍にいる友人に頼んでみるよ。民間機を使えば必ず足がつくからね。軍用機なら搭乗客リストはないから」

確かにその通りだ。軍の輸送機なら荷物チェックなどはない。もちろん搭乗客リストなどあるはずが無い
調べられる可能性は極めて低い。面倒な事を頼んでいる事は分かっている。
でも、もう2度と引き返す道を選ぶことは嫌になったのだ。前に進むことを選んだ
どんなに厳しい道でも、前を見て歩いていくしかないのだとそう決めたのだ

「カオリちゃん。君は覚悟はできているのかな?」

どんなに厳しい道でも選べるのかなと
私はこう答えた。覚悟はあると。もう、誰も大切な人が傷ついてほしくない。私のせいで
だから決別するときなのだ。私の『過去』と。そして私は未来を切り開く。
過去の事実を忘れるわけではないが未来を見なければお母さんとお父さんに申し訳ないと思った

「もし、準備ができたら教えてください。たとえルミナさんに止められても私は歩みを止めるつもりはありません」

「カオリちゃん。強くなったね」

「覚悟を決めたら何でもできるんですよ」

私はそう言うとベンチから立ち上がり、中庭を出ていった。そして駐車場に行くとこちらに来る時に使った車に乗り込んだ
エンジンをかけると海岸の町にある自宅に戻っていくことにした。その時だった。連絡があったのは

『ピーピーピー』

「はい」

『君にとっておきの情報があるよ。ゼーレは今もドイツに存在する。本拠地の住所をメールしておくよ』

その声は加持さんの声だった。彼はそれだけを言い残すと電話を切った。それと同時にメールが来た
ドイツのハンブルク郊外にある所に大規模な豪邸がある。そこが拠点とのことだった。
場所は分かった。あとは向かうだけだ。問題なのはルミナさんだけではない
お父さんとお母さんになんて説明したら良いか。はっきり言って私にとっては隠し事がしたくない
家族には。本当の意味で愛してくれているから特にだ。でも話せばきっと止められる
どれだけ危険か知っているから。でも時計の針は止まらないのと同じで私の思いも止まらない