車でハンブルク基地を出発してから1時間ほど経過しただろうか
私は外の風景を見てこう思った。ここもあそこと同じだと
人と人との関係が希薄に見えた。まるで仮面をかぶりあっているかのように
私はそう感じられた。そんな思いを抱きながら市街地を抜けて郊外にある1軒の豪邸の前に到着した
そこはまるで戦場だった。周囲を現地の警察機構のひとなのだろうか。それにしてはあまりにも物騒な銃火器を所持していた

「ここで待っててね」

車をあるトレーラーの横に止めると、トレーラーの荷台部分に入っていった。
窓から見えたのは中には様々な電子機器があった

「なにか物々しいですね」

「ここがゼーレの本部だからだろうね。きっと誰もが踏み込むタイミングを待っているんだよ」

ユウさんはそう話すとともにどこか苦々しい表情をしていた。ユウさんの過去は知っている
だから彼の気持ちが少しくらいは分かるかもしれないと思っていたが実際は違った
人の気持ちほど理解できないものはない。

「ユウさんはここに来たことが?」

「僕は実行部隊だったからね。こういうところは来ないよ。もっとひどい所だったよ」

そうですかと言うと私は黙ってしまった。するとユウさんは私の頭を軽く撫でた

「大丈夫。カオリちゃんのことは必ず守るから」

「ユウさん」

私はいつもと変わらないユウさんを見て少し安心をした
だが周りの状況は緊迫していた。ルミナさん達はホルスターから銃を抜いてスライドを引いた
いつでも発砲できる状態であるという明確な意思表示だ

「ルミナさん」

「どうしたの」

私は決めた。正面から向き合わないといけない時だと

「ドアを開けてください。私が行きます」

当然のことだがルミナさんは反対してきた。危険すぎる事は分かっていた。
誰もが分かり切っている事だ。門は開いているが敷地内には誰も一歩も入ろうとしていない
みんな怖いのだ

「危険すぎるよ。カオリちゃん」

「私が行けば、きっと彼らは行動を始めます」

「だめよ!」

今あなたを失うわけにはいかないのとルミナさんは止めるが私は言う事を聞くことはしなかった。
自分から後部座席のドアを開けると車から降りて正面ゲートの方に歩いていった
ルミナさんとユウさんは慌てて私の警護に入った
私はあえて正面ゲートの前に立った。撃たれるかもしれないという恐怖を抱きながら

「カオリちゃん。本気なのかな?」

「もう、恐れる事はしない。前を見て歩くんです」

そう言うと私は敷地内に入っていった。ルミナさんとユウさんを連れて、
他の警察機構や軍の関係者も私の後を追うかのように続いていった
私は内心では少し怯えていたが、前を見ないで生きていくことはできないと思い歩みを進めた
すると屋敷の中から数名の武装した人間が出てきた

「全員下がれ!ここは私有地だ!ここは誇り高きキール・ローレンツ様の屋敷だ」

私は意を決してこういった

「彼に話があるの。だから、こう伝えて。真実を話そうと」