海岸の町 旅館の食堂

私とユウさんは一緒に昼食を食べに来ていた。昼食の時間には少し早いようで、お客さんは比較的少なかった
私はいつものように専用メニューだった。栄養バランスが良く、なおかつ量は少なめという難しい注文のメニューだ
あのドイツでの光景が嘘のように暖かい場所だ。私にとってはここが故郷なのかもしれない
例え、違っていたとしても私はそうだと思いたい。なぜなら幸せだから
私はこの町で生きていて幸せに暮らせている
それが何物にも代えることができない貴重な宝物だ
私は罪を犯した。だからその償いのためにも私はこれから時間をかけて世界を見守る
再びあの悪夢を繰り返させないためにも平和であり続ける事を切に願う

「カオリちゃん。大丈夫?」

怖い顔になっているよとユウさんに言われ、ちょっと考え事をと答えると

「カオリちゃんはもう自由だから」

自由、ただ私にとってはこの町に住んでいる事の方が自由に暮らしているように感じられる
誰もが顔を知っている小さな町だけど、自然豊かな場所。
都会とは違ったまた別の良さに私はかなり気に入っていた
都会はどうも好きになれない。思い出すからかもしれないけど
この町で静かに暮らしていけるならもう私は別に贅沢なんて言わない
これ以上のことを願ってしまったら贅沢な注文だ
私にとって大切なものはこの町にたくさんある
お母さんとお父さんの愛情。旅館でお仕事をしている人たち
そしてユウさんやルミナさん。みんなの思いでいっぱいだ
私はこの楽園を手放したくはなかった
たとえそれが今だけの物だとわかっていても
その今を大事にして生きていきたい
私とユウさんの出会いが運命ならそれは、お互いに何かを取り戻すために出会ったのだろう
私は未来と大切な物。ユウさんは過去を振り切って新しい未来を
そうだと思っていると少しは心に余裕が生まれるかもしれない

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あの子の母としてカオリが無事に帰ってきたことは私にとっては最高の喜びだった
あの子は私にとって、いえ、私達全員にとって大切な子。
たとえ血縁関係が無くても家族なのだから
血のつながりが家族だというのはきっと違う。
本当に愛情をもって育てているから家族だと私は思っている
これからはもっといろいろと楽しい事を経験してほしいと思っている
私達はカオリのことを縛るつもりはない
自由にのびのびと、あの子が満足できるなら私達は止める事はしない
子供の幸せを願い続けるのが親の役割だと私は思っている