私はお昼を食べ終えると食器を返して事務室に向かった。
ネコさん達にお昼を食べてもらう時間だからだ。こういう時間を私は貴重に思う
何でもない事がとても貴重な時間のように感じられる
いつものようにネコさん達のご飯であるキャットフードを専用の皿に盛り付けるとそれを持って中庭に向かった
するとそれを待っていたかのようにネコさん達が集まってきた

「待っててね」

私はエサが入った皿を地面に置くと近くのベンチに座った
海風が入りとてもいい空気だ。都会とは違い、潮の香りがする良い所だ
ここは私にとって最高の場所なのだ。
誰もが静かに暮らしている世界。平和で。お互いの顔を知っている
みんなが心から愛しているこの海岸の町。

「今日も良い天気だね」

ネコさんに語り掛けるかのように話しかけると彼らは理解しているのかどうかはわからないが
私の方を向いてニャーと声を出して反応してくれた。
私はご飯を食べ終えたのか近づいてきたネコを抱きかかえると膝の上に下ろした
すると他のネコさん達も同じように求めるかのように近づいてきた

「もう、だめだよ」

私はそんなことを言いながら、ネコさん達の頭を撫でるだけにした。
いくら私でも膝の上に何頭も上げる事はできない
頑張って2頭が限界だ。するとネコさん達は私の足元で丸くなってまるで眠るかのように目を細めた
子ネコさんたちは今日は中庭に生えている猫じゃらしなどの草で遊んでいた

「平和だね」

するとユウさんがこちらに近づいてきた。
あの子たち、ネコさん達はまるで慌ててかのように私の周りからどこかに行ってしまった

「嫌われたかな?」

「そんなことないと思いますけど」

ユウさんの言葉に私はそう返すしかなかった
ネコさん達は別にユウさんのことを嫌っているのではないと思いたい。
一緒に暮らしているのだから

「それで調子はどうだい?」

「元気はありますけど。これからのことを思うと」

「そうだね。すべては始まったばかりだから。でもカオリちゃんの決断は間違っていないと思うよ」

ユウさんも私の横に座ると優しく抱きしめてくれた

「きっと願いは叶うよ」

ユウさんはそう言った。私の願い。それは世界が平穏であることだ
私のせいで争いを起きる事は絶対に望まない。もしそういう事態になったら私はこの町から姿を消すつもりでいた
でもずっと帰ってこないわけじゃない。ちゃんと毎週のようにお母さんとお父さんの手紙を書いて元気ですって伝える事は忘れない
お父さんとお母さんは心配性だから少しは安心できる材料になれば良いと思っている
幸せは突然になって訪れるものだ。その何かが分かればいいのだけど

「願いがかなったことはあんまり少ないんですけど、私は多くは望まないんです」

そう、私はただこの町でみんなと静かに暮らして世界を見ていく。そう決めたのだ
たとえ神様の役割を果たせないとしても私には見守っていく責任があると思っていた
いつか、誰かが引き継いでくれるまで。私は・・・・・・・