その日の夕方、私とユウさんは夜から出発する事にした
ルミナさんに止められるのを避けるためだ。これは私の問題だから
できる事なら巻き込みたくなかった。確かに私は世界に影響を及ぼす神様に近い人間かもしれない
でも目的のためには手段は選んでいられる状況ではない事は事実だ
夕方になって私とユウさんは部屋を出るといつもとは違って裏口から駐車場に出た
念のため、ユウさんの車ではなくお父さんのセダン車両を借りる事にした
ユウさんが発信機を取り付けられている可能性があると危惧したからだ
車に乗り込んで私は助手席、ユウさんは運転席に乗って出発しようとしたときお母さんが近づいてきた

「本当に大丈夫なの?」

「私が帰ってくる場所はここだけだから。それに数日留守にするだけ。すぐに戻ってくるから」

「ルミナさんにはなんて話をしたらいいの?」

きっと不安になって聞きに来ると思うわよとお母さんが言ったので私は病気という事にしておいてとお願いした
今回ばかりはルミナさんの手を借りるわけにはいかない。

「気をつけてね。ユウさんもカオリのことをよろしく」

「分かっています。必ず戻ってきますので」

話がまとまるとユウさんは車を出した
彼は私にこういった。本当にこれで良いのかなと

「これが最後になると思うんです。巣から羽ばたくのに必要な事は」

私とユウさんが乗った車は海岸の町を離れて都会である第三新東京市に向かっていった
残された課題は1つだ。惣流アスカさんと碇レイさんをどうやって呼び出すかだが
手段は1つあった。ただ、彼に貸しを作るようで少し嫌だったが。この際選んでいられる状況ではない

「あなたにお願いがあるの」

『君からのお願いとなると断れないね』

「アスカさんとレイさんをある場所に誘導して。明日のお昼に。もちろん、保安諜報部に追跡されないようにうまく小細工をしてね」

『君がそんなことを頼むなんてよほどのことだね』

「手段は問わないから。私にだって覚悟はできているつもりでいるから」

彼は分かったよと言うとどこに集めたらいいのかと聞いてきた。
そこで第三新東京市を一望できる高台にまで来るようにと伝えた
かつて私が碇シンジだったころに初めてあの街のすべてを見た時の場所だ

『もし彼女たちが君のことを受け入れなかったらどうするつもり?』

「私はもう碇シンジじゃない。海岸の町に住むただの女性」

『僕達より年上だからね』

「私はあそこで人生を失った。生きる価値も死ぬ価値も。なにもかも』

私はまた追って連絡するからと言うと通話を切った