ヘリで海岸の町に戻っている間は私は泣きっぱなしだった
でも良かったのかもしれない
これで彼女たちは私にもう関わろうとしないだろう
そうでなければ困るのだ。それをしてもらうために私は動いたのだから

「無茶するわね。カオリちゃん」

「私だってこんなことはしたくなかったですけど。もうあの街と関わりあうのは嫌だったから」

そう、私の最大の目標は2度と彼らと接触することを避けるためだ
それができなければ意味がない

「それで満足したのかしら?」

「はい。私は伝えたいことは伝えました。あとは彼らの問題です」

そう、私はもうこれであの街との関わりがないだろうと思っていた
私はあの静かな町でこれからも過ごしていく
そして世界を見ていくのだ。
ようやく訪れるであろう平穏を嬉しく思いながらも
少し寂しさも感じる。幸せは近いようで遠くにある者なのだから
幸せに手を伸ばすには様々な苦難が待っている
それらを突破してこそ本当の幸せを得ることができる

「カオリちゃんは今後どうするつもりなの?」

「あの町で静かに暮らしていくだけです。記憶が少し欠けていても気にしない」

たとえ記憶が欠けていてもだ。今生きている事が重要なのだ
これからも、それは変わらない
永遠に続く物語の序章に入ったばかりなのだから
これから、様々に起こる出来事を広い視野で見ていく
それは他の人から見たら何をしているのかわからないことかもしれないけど
私にはこの世界の行く先を見届ける義務がある
たとえ人類がどんな選択をしてもだ

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僕はヘリに乗りながらカオリちゃんの表情を見ていた
彼女はようやくしがらみから解き放たれたような表情をしていた
これで彼女は平和に暮らせるだろう。僕はカオリちゃんを見届けるつもりだ
永遠の誓いによってあの海岸の町は聖域として扱われる。
この誓いを破る者には相当の罰が下る事になる
もしかしたら国が壊れるようなことでは済まない。
地球全体が壊れるような事になるかもしれない。
そのためにも永遠の誓いは引き継がれていくべきものだ

「カオリちゃん。大丈夫かな?」

「はい。ユウさんは平然としていますね」

「僕はこういうヘリの移動は慣れているからね。カオリちゃんは好きじゃないかな」

カオリちゃんは地面に足がついていないと不安ですと言った
ヘリでの移動は何かと恐怖があるのだろうと僕は思った

「カオリちゃんは海岸の町で過ごすのかな?これまでも、これからも」

「はい。もう第三新東京市に関わるつもりはありません。ネルフにもです」

彼女は静かに暮らしていくだけですと言った。あの旅館で過ごせなくなったら僕の家は借りれますかと聞いてきた
僕はいつでもいいよと答えた。避難所代わりに使ってくれて構わないからだと