組織創立当初は私は監察部にいたが、する仕事はネルフから提出された報告書をチェックするだけという簡単なものであった。
ただ、その報告書は多岐におよび膨大なものであったことは今でも鮮明に覚えている。
さらに会計書類に関してはあまりの金額に驚いたものだ。記載されていた金額は小国家の数年分の国家予算に匹敵するほど。
エヴァの運用はそれら膨大な金額によるものであったことが調査に判明するも、国連上層部内により調査対象からはずされた。
それらの資料にはチェックされることもなく戻された物もあった。
決定にネルフが関与しているのは誰の目から見ても明らかであったが、当時誰も告発などが許されることはなかった。
当時、ネルフは英雄視されていたからだ。触らぬ神にたたりなし。国連はほぼネルフの言いなりであった。
私たちの職場はする仕事が失われ始めた。

国連要請に基づくネルフ査察も主要施設の査察はネルフによって中止させられた。
やがて、私たちはこの仕事に価値を見出せなくなっていった。なにをしても、国連によって中止命令が出される。
これではいったいどんな仕事をすればいいのか私たちはわからなくなっていった。
そんななか、監察局に新局長と監察部に一人の女性が配属された。それが今の本部監察局長蒼崎とルミナであった。
私達監察部のメンバーにとって新人であったルミナは正直言って変わった女性であったことは今でも覚えている。
物静かで、常に冷静、無表情、話すことといったら仕事のこと。プライベートのことなど当初は知ることはなかった。
私は退屈ついでに彼女のことを調べた時、IDの記録をまず確認した。
私の役職では閲覧可能であったこともあり容易だったが、その内容はまるで疑ってくださいというものであった。
住所は本部監察局、本籍地・年齢・家族構成は不明。彼女についてわかることは名前くらいであった。
ただ、暇であったのはその時までであった。新しく赴任して来た監察局長によって組織の改革が行われた。
私達監察局のメンバーの多くも海外支部などに監察任務などに回された。
新しい監察部はネルフ感情があまりよくないメンバーで構成された。もちろん、私も役職から降格され一般職員に戻された。
新しい部長にはネルフに対して徹底的に反抗できる、国連軍法務官を務めていた『シエラ・ドーレス』が着任した。
改めて徹底的に査察が行われた。後に悪魔の数ヶ月と監察部に伝わる話になる元を作った人物だ。
そのことはまあ置いとくとして。この部長、嫌味が上手でネチネチとネルフの広報部員だけではなく上級幹部までにもぶつける。
いうまでもないが私たちにも実害が非常にあったわけだが。
仕事という聞き流すのにちょうどいい相手がいたのでさほど気にならなかった。
この査察の結果、ネルフの動きは今後大きく鈍らせることができたことは上出来であったが。
その後も抜き打ちで何度も行われたが、そのたびに私達監察部が嫌味という迷惑をこうむるのだから・・・・・

私自身、組織が変わった後の仕事はあの嫌味を引いても充実したものであると思っている。
以前のようにだらだらと過ごすのと比べればマシなのだ。ドーレス部長が赴任してきてから半年が経った頃。
私はようやく忙しすぎる毎日になれてきた。その日、珍しく仕事が定時である午後7時に終わった。
私は夕飯を食堂で食べて帰ろうと監察局1階にある食堂に足を運んでいたのだが、その途中でルミナを見かけた。
それは彼女がエレベーターに乗り込むところであったが、その様子は明らかにいつもの冷静沈着な彼女ではなかった。
廊下を全力で走っていたのだ。私は思わず、彼女がどこに向かったのかエレベーターが現在何階にいるのかを示す表示を見た。
そこは局長など上級職員が部屋がある階。なぜかは知らないが、私はエレベーターに乗り込むとその階のボタンを押した。
フロアに着くと、すでに幹部は帰宅済みなのか廊下は必要最低限の明かりしかついていなかった。
そんななか、エレベーターから少しはなれたところの部屋のドアが開いているのを見つけ中からも声が聞こえる。
その声の主はあのルミナであった。私はドアの隙間に立ち、その内容を聞こうと耳を澄ました

『だが、それが事実としてどれほどのもだと』

これは監察局の局長の声だった。局長の声もいつものと同じように聞こえるが少し震えているように感じられた。

『おそらく、あれ規模以上のものが襲うでしょう。それこそ、すべてが崩壊する可能性のものが』

いったい何の話をしているのか私にはわからなかったが、どこか緊迫感のある内容であったことは2人の内容から察することができたが。
普通の監察部員と組織トップの局長。2人の共通点はしいて言えば同じ時期にここに来た。
それくぐらいだけ、のはずなのだが、どうやらそれ以外にも密接にかかわりがあるようだった。
私はやばい話になる前に逃げようと思ったのだが、扉に足があたりその音が部屋の中に響いた。
2人がその音に気づきこちらに振り返った時、私は・・・・・



その後の話は、さまざまな手段と行動した結果その秘密を知ったのだが。



それが、悪魔の扉を開けることになるとはそのときは夢にも思ってはいなかった