海岸の町 旅館の自室

ユウさんは私との話を終えると彼は部屋を退室していった
あとの選択は自分が決めるべきだと促してくれた
口で言うのは簡単なのだが。どうするべきなのだろうか私は悩んでしまった

「平和が一番なんだけど」

私は今の平穏なこの町での生活が好きだ
誰もが知りあっている小さな町。犯罪などめったに起きない平和な町
そんな町が私をいろいろとつつんでくれているのだろう
優しさという感情を町が持っているかのように
でも少しはこの町から出て新しい世界を見てみるのもいいかもしれない
人々が忙しく生きている都会などで生活をしてみるのも新鮮さを生むかもしれない
でも私には怖いという感情はまだあるのだ
あの大都会である第三新東京市に比べればこの平穏ばかりのこの町で生きている方が好ましい
でも新しく出会いを求めるなら第三新東京市に進むことの方が良いかもしれない
結局のところ私はわからないままなのだ
人ではない私の存在はどう考えればいいのかわからない
悩みを抱えてしまうのだ

「旅に出るのって覚悟がいるわね」

私はいつものように冷蔵庫からコーヒー缶を取り出すと飲んだ
ブラックだったがいつも以上に苦いように感じられた
私は外でしとしとと降っている雨を眺めながらロッキングチェアに座りコーヒーを再び口にした
いったいどんな選択肢が私のためになるのか
私が人でないことはわかっている。では一体何なのか
それを考えると堂々巡りになってしまう
正解などない問題なのだから
どうしたらいいのかいつもわからくて困ってしまうばかりだ

「どうしたらいいのかな」

私はまるでハツカネズミのようにぐるぐると考えていた
正解などないことはわかっていたが
人生という名の旅路には答えなどない。
過去を糧にして前に進むしかないのだ

『ピーピーピー』

私の携帯電話に着信が入ってきた。
発信元はわからないように非通知設定の電話からだった

「カオリです」

『渚カヲルだけど君はゼーレから狙われている。気を付ける事を進めるよ』

「渚カヲル。情報をくれる事は嬉しいけど。感謝はしないから」

そう、私にとってはネルフ関係者は嫌いな存在だ。
もう2度と接触したくないしすることもないだろう。
平和にこの町で過ごして、時には冒険をして楽しく生きていくのだと考え始めていた

『わかっているよ。君にはいろいろと迷惑をかけたから情報を提供するのが僕の使命だからね。それじゃ』

そう言うと彼は通話を切った。私はため息をついた
問題が1つ解決すれば1つ発生する