結局、私はたくさんの参考書を買って海岸の町の旅館に帰ってきた
かなりの量の参考書を買ってきたので部屋に運ぶのをユウさんに手伝ってもらった
本当にいろいろと迷惑をかけていると思うと少し考えてしまう
自分の選択が正しいのかと。ユウさんにまで迷惑をかけてしまうのだから
でも私はもう『碇シンジ』ではなく水川カオリなのだ
もう区切りはつけたのだ。エヴァパイロットたちと関係を持つつもりはない
むしろ逆である。彼らとの接触は避けたい。
時々ではあるが私は彼らの事が憎く感じてしまうからだ
結局のところ、『僕』は利用されていた。碇レイさんや渚カオル君に
そしてアスカさんには恨みはないけど、あの時の地獄の中で見た絶望に落とされた一言
彼女には悪意がないかもしれないけど、結局のところ私は恨んでいるのかもしれない

「酷い女ね。誰かの事を恨んでいなくては生きていけないなんて」

できる事ならこんな感情は捨ててしまいたい。
でもそんなことができない事が分かっている。
人は過去を捨てる事はできない。過去を糧にして未来を見るしかないのだから
過去に犯した罪はどこかで清算するしかない
しかしネルフの関係者は清算するどころか、さらに罪深い事を行ったに過ぎない
自らの罪を他者に押し付けて、英雄気取りをしているのだから

「とりあえず勉強をするとしましょう」

大学に通う費用については入学や編入時のテストに成績優秀者の免除に賭ける事にした
お母さんやお父さんたちに迷惑をかけるわけにはいかない
もし免除のリストに乗らなかったら、奨学金を借りるつもりでいた
誰にも迷惑をかけたくないのだ。ただでさえ私はわがままを言っているのだ
これ以上わがままを言っていたら、迷惑をかけるだけの存在でしかないのかもしれない
私は静かにこの世界を見たいのだ。大学を卒業したらこの町に戻ってきて静かに暮らす
平和であるこの町で静かに見守っていく
ネルフの事を許すわけではないけど、彼らが心を入れ替えてくれたら
正しい道を選んでくれたら、私はこれ以上彼らを攻撃するつもりはない

『カオリちゃん。少し良いかな?』

私の部屋をノックしてきたのはユウさんだった
大丈夫ですよと答えるとゆっくりドアを開けてきた。
彼は私にある者が入った袋を手渡してきた
中に入っているのは銃弾だ。9mm弾が100発も
それともう1丁の銃、ベレッタM92が入っていた
予備のマガジンが2つも一緒に

「備えはしておいた方が良いと思ってね」

ユウさんは邪魔だったかなと少し不安そうな表情を浮かべていた
私はすぐにそんなことはありませんと答えた
弾はたくさんあった方が良い。
だっていつ狙われるかわからないし、自分のことは自分で守らないと
そのためにユウさんの家で射撃訓練をしてきたのだし
銃弾を袋に隠すと、部屋にある金庫に片づけた。
念のためベレッタM92のマガジンが2つあったので
それぞれのマガジンにフル装填した。それを部屋にかけているリュックサックに片づけた
ちなみにベレッタM92もそこに隠している
いつ何があっても良いように。私はもう逃げる道を選ばないことを選択した
前を見て歩み続ける。過去を糧にして未来に向かって
道を決めたのは私だ。私の人生だから私が決める
他人に無理強いされていない。歩みを続けるのだ

「ここから先は私の道」

私は室内で横になり天井を眺めながらそう呟いた
迷いがあったとしても、いつかは解決するための道がある
それが『本当の両親』を傷つける行為だとしても、私は迷わない