私はもう2度とこの第三新東京市で過ごすことになるとは思っていなかった
でもこれは私が選んだ道である。なら前に進むしかない
選んだ道を後悔する時がいつかはあるかもしれない。でも私は今は後悔していない
大学生として第三新東京市立大学で勉強をするために頑張る
まだこの街での生活は始まったばかり。
私は第三新東京市営バスにのるためにマンション近くにあるバス停に向かっていた

「本当に運命ってわからないものですね」

私は歩きながらそんなことをつぶやいていた
ルミナさんは第三新東京市の大学に入る事を止めようとしていたが
私はあえていばらの道を歩むことを決めた
逃げる事はしない。でも『彼ら』とは接触しない
もう彼らとは別れる道を選んだのだから、接点になるようなことは少ない
それにルミナさんが持っている情報によると、ネルフ側は私に触れることを禁じていると聞いていた
だったらそれで良いのだ。そこにバスが到着した。私は乗り込むと座席に座った
このバスは展望台に繋がっている路線だ。
普通は第三新東京市の郊外から市中心部に向かうバスは満席だけど
この時間に郊外に向かうバスを利用する人は少ない。
事実、乗客は数えるほどしかいないのだから
それも展望台に向かえば向かうほど乗客は降りていく
そして終点の展望台のバス停の到着すると私は運賃を支払って降車した

「何も変わらないのは平和な証なのかもしれない」

のんびりと展望台から第三新東京市を眺めていた
たまには息抜きが必要だから私は今日は勉強タイムから休憩時間もかねている。
リフレッシュをするためにここに来たのだ

「広い街ね」

私はのんびりと展望台にある飲み物の自動販売機からコーヒーを買うことにした
缶コーヒーを購入すると私は展望台から第三新東京市を見ていた
そこにバイクのエンジン音が聞こえてきた。誰なのかはすぐにわかった
このバイクのエンジン音には聞き覚えがあったからだ
バイクは私がいる展望台のところで止まると運転手はヘルメットを外した

「カオリちゃん。勝手に逃げ出さないでもらえないかしら」

そう、ルミナさんだ。私は一応発信機を持っているのでどこにいるかはすぐにわかる
もちろんこれは私が誰かから襲われたり、誘拐されたりしたら大変だから
ちなみに私はカバンに銃を持っている。簡単に相手の好き放題にされるわけはないが
必要なら私はどんなにいばらの道であっても歩むことを決めたのだから

「少しくらい休憩をしても良いかなって」

「それなら私に声をかけて。家にいないことが分かって驚いたんだから」

「それで発信機の位置情報を使って追いかけてきたんですか?」

「あなたは最重要護衛対象者なのよ。言い方は悪いけど籠の鳥にしておきたかったのに」

ルミナさんの言葉に私は広い世界を見るべきではないと思っているのですかと質問した

「そこまで言うつもりはないけど、少しは出かける時は教えて」

あなた何かあったら私はどんなことでもするのよとルミナさんは言った
ルミナさんが言う『どんなことでも』という言葉にかなり危険な事を感じたが口には出さなかった

「それにしても、あなたがここに来るなんてどういう心境の変化かしら」

「ルミナさん。私だって息抜きをしたい時があります」

私の言葉にルミナさんはそれもそうねと言う

「ここでの生活。本当のところはどうなの?」

「ルミナさん。私はもう迷わないです。前を向いて歩いていくだけ」

ルミナさんは本当にあなたの心境の変化には驚きよと答えた
確かにそうかもしれない。あの海岸の町でずっと過ごすはずが第三新東京市に移住
おまけに大学入試に頑張っている。私としてはずいぶん成長したのかもしれないと考えていた
ただ籠の鳥になるのではなく広い世界を見ていく。

「ところで銃は持っているの?」

「ルミナさん。私は自分がどういう立場にあるかは理解しています」

私はルミナさんに腰に装備している銃のホルスターを軽く見せた
そこにはベレッタM92を1丁装備している
自分を守るためには必要である