ジオフロント、
それは未だに世界一の軍事力と発言権を保有している特務機関ネルフの本部がある場所。
そこは難攻不落とも言われる要塞に住んでいる現代の魔物の巣というべき存在なのだろうか。
彼ら以外の人間が入ってきたのは3度目の大災害の後だ。
今まだネルフという狂犬は暴れ放題だったが、暴れすぎたため今は着けられたくもない首輪をつけている。
その首輪こそNERV監視機構、監察局だ。監察局は今はジオフロントの端に庁舎があり多くの職員が勤務している。

庁舎の最上階、局長室ではあの町から呼び戻された私と蒼崎局長が応接用のセットソファに座っていた。
彼はコーヒーを飲んでいたがお相手である私は険しい表情で一冊のファイルを読んでいた。
私はファイルをソファーの間にあるテーブルに置いた。
ファイルには情報漏洩と彼女の情報がどこまで漏れている可能性があるかについての報告がまとめられていた。
その中で私はあの『渚カオル』の協力に基づいて報告が書かれていると注釈がつけられている所に私は苛立ちを覚えた。
あれだけ追い詰めたのに今更になってどういうつもりか

「気に入らないみたいだな。彼のこと」

局長は私の表情を見て言った。どうやら、顔に出ていたようだ

「彼の証言は今の我々にとって必要なものだ。それと彼自身も協力的だ」

そんなことは今の情勢とこの報告書を見ればわかる。でもだ。今更になってどういうつもりなのだ。
私にはそれが彼の謝罪のつもりなのかと思っていた。あれほど追い詰めた。
局長は席を立つと部屋からジオフロントが一望できる大型窓に近づくとあのピラミッドを見ていた。

「納得できないのは私とて同じことだ。だが状況を見てみなさい」

「わかっています。ですが腑に落ちません。なぜそれほどまで彼が協力的なのです。我々と彼女に対して」

私も席を立つと局長が立っているすぐ横に並びあの忌まわしきピラミッド型の本部を見ていた。

「人は愚かな生き物・・・・それが君の口癖だったな」

それは私はよく口にする言葉。人は愚かな生き物。
自身の都合の良いように解釈しまわりの事などまったく考えない愚かで馬鹿な生き物。
私はそう言っていた。それは私が人間でないからなのかもしれないがそう思っている。

「だが、愚かな生き物は愚かな生き物なりに足掻くものだ。無論私たちもそうだが」

「それが他から見てどんな醜い足掻きに見えてもな」

彼はネルフ本部をまっすぐ見つめて私に言った。まるでこれからのことが見えているかのように


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「ああ、監察局のことはこちらで対応しよう」

「ですが、我々の動きがすべて筒抜けとは、さすが蒼崎局長ですな」

ピラミッドの上層部の広々とした空間を持つ一室では二人の男性と三人の女性が話し合っていた。
ネルフのトップ6のメンバーで、碇ゲンドウ、碇ユイ、冬月コウゾウ、赤木リツコ、葛城ミサト、加持リョウジであった。

「MAGIの情報検索では彼女に関するものはほとんどがサードインパクト後のものです」

「つまり、彼女が使徒である可能性も十分にあるわけね」

赤木リツコの報告に葛城ミサトが発言したが、冬月コウゾウが結論は急ぐものではないと諌めた。
ネルフにとって、最も危惧すべきことは新たな使徒の出現である。
その最有力候補である彼女だが未だにそれをはっきりと示すべき証拠がない。
さらに渚カオル殺人未遂に関しても彼女が撃ったという確証は何一つなかった。
ネルフが確認していることはすべて状況証拠に過ぎなかった。

「とりあえず、彼女のこと。もう少し調べてみましょう」

冬月と同じ副指令であるユイの言葉に皆が頷き、部屋を退室していった。
副指令であるユイも退室しようとするとゲンドウが彼女に言葉をかけた。



「ユイ、お前は気づいているのではないか。彼女のことを」