人生というのは長い川を流れていく旅なのだ。
私はずっと長い時間を生きていく。だって『神様』と似たような存在なのだから
だからこそ広い世界を見ていきたい。渚カオル君は加持さんと一緒に展望台から去っていった
私は自動販売機で缶コーヒーを買うと展望台にあるイスから高台から見える第三新東京市を眺めていた

「カオリ。あなたって意外と面倒見が良いわね」

ルミナさんの言葉に私はどういう意味ですと聞いた

「だって、ネルフと接触するつもりはないとは言っていたけど、結末ではあなたは彼らを殺そうとは思っていない」

本当はあなたは優しい心を持っているとルミナさんは言った
確かにそうかもしれない。私は本気で殺すつもりはない
命を奪うような事は私はできればすることはしたくない
社会的に表に出ることができないような事ならするかもしれないけど
命というのは大事なものなのだから。だからそれを奪うことはしたくない
もしそういう状況に追い込まれたら私は海岸の町に戻って過ごしていく
静かな町が好きだから。

「昔のことを考えているの?」

ルミナさんの言いたいことは分かっている。きっとあの時の自分の気持ち
今も完全に整理することができない思い出が多すぎる。
良い思い出はあまりないけど、私はあの頃の

「それは『僕』のことですか?」

「それについてあなたがどういう立場であったかはよく理解しているつもりよ」

私はその言葉にある確信を得ていた。ルミナさんが私を守ろうとしているのはなぜなのか
ずっとその理由を知りたかった。だからある仮説を考えていた
もしかしたらそうではないかと。でもそんなことがあるのかを立証することは今の段階ではできない

「ルミナさんはどうして私の事を守ってくれるのですか?」

「私はあなたに初めて会った時にどう答えたか覚えているわよね」

ルミナさんはいつもこの質問をすると『私はまだ完全ではない』というような表現で答える
どういう意味で完全なのか。神様としてなのか?
それとも人としてなのか

「私は人として生きているのは世界を見るためなのか」

もしかしたらこれが『僕』に課せられた定めなのかもしれないと呟くとルミナさんは少し笑みを浮かべた

「あなたは大変な人生を送ってきた。苦労ばかりを押し付けられて、最後には世界まで押し付けられた」

そんなあなたの事が心配よとルミナさんが答えた
『僕』の人生はあの『儀式』が行われるまで、誰かに道を決められて自分で選ぶことができなかった
でも今は全く異なる。自分の生き方は他者から影響されるものではない
私自身が選択する。未来は誰かから渡されるものではない
自らが切り開いて進み続けなければならない

「ルミナさんは今の世界の事をどう思っていますか?」

「それは誰が答えるかによって変わるものよ。人にはそれぞれ個人の意思がある」

ルミナさんの言う通りだ。人にはそれぞれ自らが歩む道を決断することが求められる
誰かから与えられたレールを歩むものではない

「私は神様に等しい存在なら、いい加減な対応をしているのではないかと思うんです」

神様だからと言って好き勝手に介入することは良いことではない
人には希望を見る権利がある。その希望という名の道が崩れるかもしれないけど
そういった難所を潜り抜けていくことが人生という名の旅なのだ

「もし私が公平性を持たないで罰しる事をしていたら、ネルフとゼーレの2つの組織の関係者を抹殺している」

「でもあなたはそれをしなかった。法の裁きにあなたは任せた」

ルミナさんの言う通りだ。人を裁くのは法律だ
私の独断と偏見で裁くのは緊急事態だけである
そういう事を避けたいのは事実だけど。
私はルミナさんにそろそろ帰りましょうかと言った時、ルミナさんはとっさに私に飛びついてきた
次に聞こえてきたのは銃声だ