翌朝、私はいつものように目が覚めた。体調は昨日の夜とは違い万全の状態。
起きたと同じタイミングでお母さんがドアをノックして入ってきた。起きている私を見て安堵の表情を浮かべていた。
「おはよう、カオリ。体の調子は大丈夫?」
「大丈夫みたい。今日は散歩にいけるみたい」
その言葉にお母さんは不安そうな表情に変わった。私は大丈夫よと笑顔で言うと布団から出て、布団を片付けた。
よっぽど心配なのか、出かけるときは声をかけてねと言うと仕事に戻っていった。私はわかったよと返した。
「心配性だけど、仕方がないよね」
私は昨日一晩で割り切れたのか、悩みがなくなったように感じていた。でもどこかで不安も少し覚えていた。
とりあえずは不安はどこかに置いておき、部屋から出ると食堂に向かった。
食堂に行くと旅館を利用したお客さんも数多く食事を取っていた
いつもの光景なのに、なぜか貴重なものに感じられた。
私はいつもどおり食事を済ませると食堂の勝手口から外に出た
旅館の裏側をとおり、食料保管用の倉庫からネコ用カン詰めとお皿を手にしたころには私の足元に多くの猫が集まっていた
「もう少し待っててね」
私は猫を引き連れていつもの長いすがあるところにつくと、そこに持ってきたネコ用缶詰の中身を皿の上に乗せた
猫たちは待ち浴びていたかのようにご飯を食べていた。
私の今とは正反対に猫たちは精一杯生きている。私は今も暗い迷路を迷い続けている
どうしていいのかわからず、困り続けて
「おかわりが必要?」
ネコ達はおかわりが必要なのか私の足に縋ってきた。私はいくつかのネコ用缶詰を手にすると皿の上に中身を出した
彼らは最初と同じように食べていた。本当に何もかもが私とは正反対。
私は今もどうしていいかわからず、さまよい続けている。結論の出ないまま
このまま今のまま過ごせたら良いなんて思っているけど、きっとそれは無理
いつか答えを出さないといけないときが必ず訪れる
そう遠くない時期に
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お昼、私はいつもどおり食堂で昼食を済ませた。
量は少ないけど、いつもに比べれば多く食べられたと思う。
その後の予定は私はなにも決めていなかった。ひとまず自分の部屋に戻り、テレビをつけた。
特に興味も持たずお昼のワイドショーを見ていた。相変わらずメディアは渚カヲル襲撃事件の話題で持ちきり
「どうしたらいいの?」
私がやったことの大きさに戸惑いを隠せない。もう何日もたつのにこんな大騒動になるとは
あのときの私は無我夢中だった。ただもう忘れたくて仕方が無い記憶を思い出すことは苦痛以外何者でもない
それに彼らに私の事実が知られればきっと何かに利用される。そんな目にはあいたくなかった。
昔みたいにただ利用されるだけの人生ではなく、自分で選んで生きていく人生が幸せだった
それは夢のような時間だった。ようやく馴染んできたこの『世界』との関係を壊すわけには行かない
だけど、私の過去はいつまでも私に付きまとってくる
「カオリ」
振り返るとお母さんが私を呼んでていた
「今日は散歩はどうする?」
いつもどおりの心配なのだろうけど、言葉はそれ以上に不安の色が混じっているように感じた
私は今日は行ってくると言うと、ついでに砂浜近くにある魚屋に注文をお願いとメモを渡された
普段なら電話で済ませていることなのだが、たまには用事付の散歩はどうかしらと
私はわかったとメモを受け取ると自分の部屋に戻り、外に行く準備をしていった
靴を履き、注文用のメモを片手に家を出発した。道のりはいつもと変わらない。ただ、誰かの視線を時々感じた
それが誰なのかはわからないけど、私に敵意は感じなかった。ただ見ているだけ。そう感じた
「なにがどうなってるの?」
海岸近くまで来るとお昼と会って地元の人たちが数多くいた。私は目的の魚屋で注文を伝えると後で届けるよと返事をもらった
これでお母さんの用事は終わりだ。後は海岸の砂浜でゆっくりと過ごすだけ。でもそこにはいつもはいない人が立っていた
「ルミナさん、どうして」
私の声が聞こえたのか彼女は振り返る。その表情は何か苦悩を抱えているかのように見えた
「あなたを守るために来たのよ。だからお願いを聞いてほしいの」
その願いはあまりにも今の私には受け入れられるものではなかった
だが、少し考えさせてほしいと答えてしまった。そんな考えなど無かったのに
「あなたは誰なの?」
いつも彼女にたずねる質問、私のことをすべて知っているような気がしたときからずっと
「今はまだ答えれない。あなたの決意が固まれば真実は明らかになるわ」