ユウさんの言葉は正論だ。
確かにセカンドインパクトの後の世界が苦しいものであったことは認める
ただし碇ユイさんや碇ゲンドウさんには生活が困ることはなかったはず
でも計画は進められた。自らの自己満足のために多くのものを犠牲に、
踏み台にしてのし上がってきた汚い連中である

「薄汚い計画に参加してあなた達は世界を壊そうとした」

あなたは世界を守ったつもりなのかもしれないけど大量殺戮を実行した主犯であると
私はユウさんが言う前に自らの意見で突き放していった
家族だからという言い訳は彼らに通用しない
私の本当のお母さんは海岸の町の両親だけだ
碇ユイさんや碇ゲンドウを両親と思うことはあり得ない
両親どころか私を実験材料にしたということでしか認識できない

「碇ユイさん。あなたは何が欲しかったのですか?科学者としての名声なのか?」

その質問に彼女は答えることはできなかった
答えることができるはずがない。『僕』を実験材料にしたことは明確なのだから
苦しめるだけ苦しめて好き勝手に利用した。子供を持つ親としては最低ランクだ

「あなたにとって大切なのは何ですか?英雄としての碇シンジ?それともただ家族ごっこをしたい碇シンジ」

あなたはどちらが欲しかったのですかと私は追及をつづけた

「私はただ謝りたくて」

「謝る?ばかげた話ですね。碇シンジ君の墓はここです。もっとも、遺体を埋葬しているわけではないので」

この墓地にある碇シンジの墓標はとにかくただの嫌みのつもりであるのだ
自分たちがどれほどひどいことをしてきたことを彼らに見せつけるために存在する
そうでなければ『僕』は自らの墓を建てるわけはない
私は碇シンジではないのだ。水川カオリでありあの海岸の町にいる両親こそが真実なのだ
今更碇ユイさんや碇ゲンドウさんに本当の親だからと言って謝罪されたとしても私は気にしない
謝罪するならこの墓標にするべきだ。
この碇シンジの墓標は『僕』がもう碇シンジではないことを分からせるためのもの

「それは」

「あなたたちは何を考えているのですか。いい加減にこんな茶番劇に付き合うのは面倒なので」

碇ユイさんが何か面倒なことを考えているのではないかと私は疑っていた
もし私に手を出すことを考えているなら痛い目にあわせてやりたいところなのだが
現実に私に手を出してきたら、どんなことになるか分からせる必要がある
私が動かなくてもルミナさんやユウさんが動き出すことはわかっている
2人は私を守るためなら手が血に染まっても構わないと考えているのだから