私とユウさんはとりあえずマンションの部屋に戻るとユウさんはコーヒーでも飲むかなと質問してきた
たまには違う銘柄のコーヒーを飲むのも良いと思ってお願いしますと答えた
リビングのソファに座ると私はテレビを見始めた
ネルフサイドが報道管制をしている影響で情報漏れはほとんど確認されていない
彼らにとっても私の存在が漏れることを危険視するネルフの職員がいるのだろう
例えば伊吹マヤさんとか。ユウさんの情報を『MAGI』から抹消してくれたのだ
だから少しは手助けはしてくれるかもしれないけど、こちらから直接接触すると極めて危険である
マヤさんを追い詰めるようなことはしたくない。

「悩み事が多いです」

私の独り言にユウさんは何か悩み事でもできたのかなと聞いてきた
真実を話すのは限られた人物であることの方がいい
ユウさんは信頼も信用もできるが、大きな陰謀に巻き込むようなことはしたくない
ネルフ内で限られた私の『協力者』であるからだ
もちろん直接的な接触をすればマヤさんが疑われてしまう
私との接触は極力避ける方が安全である。
私の影響で彼女まで巻き込むようなことは避けたい

「私にとって信頼できる人はルミナさんとユウさんと海岸の町の人たち。それ以外は敵だと思っていました」

その限られたメンバーの中に加持さんと伊吹マヤさん、
2人はそれなりに味方になってくれる人のリストに掲載されている
マヤさんは自ら行ったことがスパイ行為に近いことを知りながら協力してくれた
ユウさんの記録をすべて抹消するためにかなりの危険な道を選んでくれた
だからそれなりには信頼できる。加持さんもいろいろと協力してくれている
問題があるとすれば渚カオルだ。彼は協力していると言ってもどこまで信頼できるかわからない
難しい境界線の上を歩いていることは事実ではあるが

「信用できる人って難しいですね」

「それが人間の生き方だからね」

ユウさんは暖かいコーヒーが注がれたカップを渡しながら話した
でもユウさんの言うとおりである。人の人生はどこで路線が変わるかわからない
私も同じだ。海岸の町でずっと過ごす予定が第三新東京市に移住した
世の中分からないことだらけといっても過言ではない

「ユウさんはどう見てます?今のこの世界を」

「ずいぶんと哲学的な話だね。僕は世の中きれいごとだけでは生活できないことは事実だと評価するよ」

「それってゼーレにいたからですか?ネルフは元々はゼーレの下部組織だったから」

「ゼーレは自分たちの言う事を聞く組織が欲しかった。だからネルフを作り出した」

「それは当たっていますね」

「今はネルフが世界の中心にある状況。監察局を除けばだけどね」

ルミナさんたちが属している監察局によってネルフは好き勝手に行動することは難しい
ネルフの活動を監視することが彼らの仕事なのだから
狂犬に首輪をつけて抑え込んでいるのが現状なのだ
ネルフの真実はおそらくこの先一生明らかになることはない。
もしネルフがつぶれると世界情勢が大きく変わってしまう
そんなことはルミナさんたちが属している監察局もわかっている
だから深く突っ込んだことをすればリスクが高まる。
ぎりぎりの境界線で活動しているのが現状なのだ