ルミナさんが自分のマンションの部屋に戻るのを確認すると僕は玄関の扉を閉じた

「それにしてもルミナさんは本当に心配性だね。僕はどんな手段を使ってでもカオリちゃんを守るつもりなんだけど」

僕には多くの貯金がある。ルミナさんに迷惑をかけることはないほどに
なのでカオリちゃんの警護についても、この街での生活費の心配をする必要はない
もちろん投資ファンドに一部の資金の運用を任せている。おかげで毎年かなりの収入がある
カオリちゃんは完全に寝ているようだ。さすがに女性の部屋に入るのはやめておきたい
せっかく眠りについたのに起こすというのは良いことではない
それに急ぐ用事でもないからだ

「とりあえず、僕もお風呂に入ろうかな」

僕は着替えを持ってお風呂に入浴することにした
ちなみにお風呂には銃を持ち込むわけにはいかないけど着替えが置いてある洗面台の近くに銃を隠している
たとえどんな状況であろうと守るためには必要なことなのだから

「カオリちゃんは静かに寝ているみたいだね。ルミナさんが来たから起きると思っていたけど」

もしかしたら何か危険なことがあるのではとカオリちゃんが感じて飛び起きてくるかと思っていた
でもそんな感じはしないし静かである。

「カオリちゃんも少しは休まないとね」

僕が入浴を終えて眠る前に銃のお手入れをした
いかなる時であっても銃がしっかりと機能するかを確認するためには必要である
整備をしていないと僕だけではなくてカオリちゃんの安全にもかかわってくる
だからこそしっかりとした整備と確認が重要になるのだ。
ミスをすることは許されない。それはゼーレで汚い仕事をしてきた時から十分に理解している
カオリちゃんは僕のような『汚れた人間』であっても信頼してくれている
だから僕はしっかりと彼女が静かに平和に暮らせるように最大限のサポートをするのだ
彼女は静かに暮らすことを望んでいる。誰にも命令されることなど望んでいない
自分の道は自分で判断することを誓っている
ネルフにいた頃に『彼』がどれほどつらい立場に追い込まれていたかは僕にはわからない
でも今も『碇シンジだったころの過去』に苛まれていることは事実である
『カオリ』として静かに生きようとしていたのにネルフが妨害してきた
苦しい立場に追い込まれていることは疑いようのないことだ

「本当に大変なのはこれからだね」

過去は捨てることはできない。過去があるからこそ明日という未来を見ることができる
カオリちゃんは苦しい苦難の道であっても、明るい未来があることを信じている
そうでもなければ僕たちから離れてどこかで他人が一切いないような場所で生活している
その道を選んでいないのはまだ未来を見てみたいと思っているからだろうと僕は考えていた
過去にはつらい思い出がだくさんあることはわかっている。
でも未来には少しでも一筋の明かりがあることを信じて歩もうとしている
未来を照らす一筋の明るさを感じていないなら、カオリちゃんは孤独な道を選んでいるはずだ