私はその後もユウさんと話をしていた。
久し振りに一緒に部屋の掃除をするための用意をしながらではあるが

「そういえば、カオリちゃんは教師になるのが夢なんだよね?」

私は子供たちに明るい未来があることを知ってほしい
『僕』は戦場で過ごしてきたから、今の私の大きな夢は子供たちに自由な未来を見せてあげたい
誰にも強制されることのない明るい未来。それを見つけてほしいのだ
できる事ならかつての『僕』のような人生を歩んでほしくない
ゆっくりとじっくりと子供たちが誰かに強制された未来ではなく明るい未来を見て歩み続けてほしいのだ
それが私の将来の職業選択で教師を選ん理由でもあるのだ
少しの障害物を超えることができれば、明るい未来があるかもしれない
もちろん苦難の道を歩む幼い子供もいることもあるけど、それで将来を捨てるようなことはしてほしくないのだ
私は幼い子供たちが少しでも自ら道を切り開いて、自らの選択で未来に向かって

「カオリちゃんはネルフとの付き合いはどうするのかな?」

ユウさんの質問に私は自らの歩む道を妨げる様なことがない限りは何もするつもりはないですと回答した
今さら過去を蒸し返すつもりなどない。私の進路を妨害されない限りの話ではあるが
幼い子供たちが自由に未来を選ぶのと同じである
私は私自らが選んだ道を妨害されない限りは放置するつもりである
しかし、もし妨害されてきたら徹底的に反撃する。

「ユウさんはどう思います?世界を敵に回すような私の存在のことを。それとも『僕』の存在を」

「カオリちゃん。僕が言うのはおかしいかもしれないけど、『彼』の存在が君の成長を妨げるようなことはないよ」

ユウさんは私が広い世界で自由に生きることは誰にも妨げられることはないから心配することはないよと
『僕』にとってはネルフは大きな邪魔な存在であることは事実である
内心では私は破壊したと何度も思ったけど、いつもこう考えることにしている
歴史というのは長い年月が経つことでその時代の人たちの行動が正しいことであったかを
だからその時の判断が正しかったのかは今は誰にも分らないことなのだと

「僕はカオリちゃんはたくさん甘えて良いと思っているよ。なぜなら君は1人じゃない」

時間をかけてその答えを見つけるために歩みだしているのだとユウさんは話してくれた
あの海岸の町では私の時計は止まっていた
しかし今は状況が大きく変わった。時計の針が少しずつ動き始めたのかもしれない
だからじっくりとその時間を大切にしながら歩みだすのは誰にも妨げられることがない私の権利だと
ユウさんは私の頭を撫でてくれた。いつもあの町でお母さんに頻繁にそうやって優しく包み込んでくれたのと同じように
ユウさんも優しく接してくれた。私はそれが少し恥ずかしいと思いながらも本当に私のために人生を繋げてくれている

「ユウさんは『僕』のことをどう思います?」

その質問をするのはもう何回目になるだろう
いつも気になってしまうのだ。『私』になる前の『僕』存在がどのようなものだったのか
気になってしまって、拒絶されることを恐れているから同じようなことを何度も質問してしまう
でもユウさんはあの海岸の町にいた頃と同じ回答をしてくれる
それは『僕』が悪いわけではないと。あの時は世界がおかしかったと
狂ってしまった地球の歴史をとりあえず『正常化』したことは正しいし、私の存在価値を否定することもしない
全ては歴史が悪かった。一部の人や組織が世界をおかしくした
『僕』はそれを少しでも良い方向に向かわせたと。