救急車とパトカーが近づいてきたのはサイレンの音で分かっている
それでもルミナさんとユウさんはもしかしたら偽物の救急隊員や警察官ではないかと危惧しているみたいだった
私は2人の準備の良さにすごいと思いながらも少し痛みで苦しんでいるような演技をしていた

「カオリ!」

ルミナさんは私が演技をしていることを分かっている
ユウさんも同じである。だからこそ私にしか聞こえないような小声で頑張ってと
私は小さく頷きながらルミナさんとユウさんが次に何を行うか
それを考えながら、とにかくけが人の演技を続けていた
幸いなことにここに駆けつけてきた救急隊員と警察官は本物だったようで、
ルミナさんとユウさんに守られながら私は救急車に乗せられると第三新東京市立病院に搬送されていった
私たちが乗った救急車がマンションから病院に向かってしばらく奏功したところでルミナさんにもう大丈夫よと言われた

「どうでした?私の演技は?」

「かなり良い感じね。女優になれるかもしれないわよ」

わたしの質問にルミナさんはそう回答した。
ユウさんもなかなか演技が上手だったよと褒めてくれた

「カオリちゃんなら良い女優さんになれるよ。名演技だったからね」

ユウさんの言葉に私はあまり多くの人に知られるわけにはいかない
『特別な事情』があるから本当に女優になるのは難しいけどとも話してくれた
彼の言う通りで私は本当に『特別な事情』がある
できるだけマスコミに巻き込まれるようなことになれば、今後の生活にいろいろと影響が出てしまう
私は穏やかにゆっくりと暮らしていきたいのだから

「これでも演技は得意なので」

いろいろな方法で強襲されることを想定して頭の中で考えていた
だからあの手の演技は私の頭の中でできれば使うことがないことを願っていたが、
必要になるようなことがあっても良いように演技力を高めるために動いていた

「そういえば、この車の救急隊員は大丈夫ですか?」

私は念のために確認するとルミナさんは監察局から私を守るために配置されている
簡単に言ってしまえば、ルミナさんの同僚なのだ
だから信頼できているようだった。私はこれほど簡単に話が進む理由を察した。
ルミナさんが監察局の局員を救急隊員ということで自宅近くの消防署に配置。
いつでも私に何かトラブルが発生しても対応できるように、待機させているということだ

「準備が良いですね」

「それだけルミナさんは僕を信頼してくれていないからかもね」

ユウさんの辛口コメントにルミナさんはあなたを信頼するには慎重にしないといけないわと
ルミナさんは相変わらずのことではあるけど、私のことを心配している。
私はルミナさんにユウさんは信頼できることを分かっている。
信頼関係が濃厚な状態でベッドは別でも同じ家に住んでいる