とりあえず今日は病院のベッドで過ごすことになるなんて

「幸運の神様からは私は見放されているのかもしれませんね」

私の言葉にユウさんは少し苦笑いをしていた

「カオリちゃんは何も悪くないよ。僕なんかが言っても説得力はないけど」

ユウさんは以前はゼーレ側にいた。でも今は私を守るために命をささげようとしている
私にとってユウさんは大切な人。『僕』の過去を知っているけど『私』のために援護をしてくれる
こんな不幸という名の荷物を背負っている私に関わってきても良いことは何もない。
ユウさんもそのことを分かっているけど、きっとどこまでも付き合ってくれるだろうことはわかっているはずなのに
それでも協力してくれるし助けてくれる。ルミナさんや海岸の町にいる私の両親や一緒に過ごしていたみんなと
大切な人が犠牲になるかもと知ればどんな方法を選択しても抹殺する
『家族』を守ることは当然のことであり、私の義務である
何が何でも守るしかない。それだけ『家族』が私にとって大切だから

「カオリちゃん、今日はここで過ごしてもらうことになりそうだよ」

ユウさんの言葉に私はわかっていますと回答した
防弾ガラスを取り換えてもらわなければいけないのだから
被弾してしまったのだから当たり前のことだ。
防弾ガラスの交換に関するお金についてユウさんに質問しようとした
でもユウさんは私が何を考えているかに気が付いているのかもしれなかった

「ガラスは今日中に交換するように手配するそうだよ。ルミナさんに任せることにしたよ」

面倒な横やりが入ることを防ぐために動いてくれているらしい
ルミナさんにもいろいろと迷惑をかけている
もちろんユウさんにもいろいろと迷惑をかけて本当に私は申し訳なかった
だけど状況がこのまま穏やかに進むとはとても思えない。
何か大きな動きになるかもしれないからだ。今後のことを考えるとなおさらだ
私だけのトラブルにユウさんやルミナさんを巻き込みたくはなかった
だって私は神様なのかもしれないけど、少しお仕事をしない怠け者の神様だから
私のことだけを優先的に考えて行動している。
正義の味方何て存在しないことも私はよく理解している
ネルフも言ってみれば悪党と言っても過言ではない。
ゼーレの下部組織だったのだから。『僕の父』は『僕の母』を取り戻すためにあらゆる人間を利用した
私はそんなことはしない。もし海岸の町に住んでいる大切な人たちを守るためなら、
どれ程汚れた方法を使って、そしてありとあらゆる手段を選ぶことに迷いはない
もう失うわけにはいかないから。私の大切な人たちを守るために

「それにしてもどこが攻撃してきたのかを調べるのは大変だね」

そう。ユウさんの言う通りで私を狙う人間はかなり限定されている
確かにゼーレの関係者から狙われるならわかる。
だとしてもこのネルフのおひざ元である第三新東京市で事を起こすのはリスクがありすぎる。
いったい何をするつもりなのかを早急に調べなければいけない
その捜査を行うにはネルフに介入されないように対応することが重要だ
彼らに邪魔されたら捜査は進まない。下手をすれば彼らが独自に捜査を行って真実を葬るかもしれない
それはそれでいいこともあると思うけど、私的にはあまりよろしくない状況に追い込まれるかもしれない
問題をできるだけ大きなことにしない

「ところでカオリちゃん。気を付けた方が良いよ。今回のことでよくわかったから」

ユウさんの言葉にそれは私に言っているのですかと少し笑いながら答えた
私の方はまだ『特別な存在』だから。ユウさんの方が巻き込まれたらどうなるかは想像したくない
事実、私は人という領域から少し外れている。でもユウさんは人間なのだ。
私は怪我をしてもそれほど影響は出ないけど、ユウさんは人間。
少しの隙によっては死んでしまうこともある。
だから私は自分がけがをするだけでユウさんを守れるならいつでも対抗措置に踏み切る