俺は『彼』に助けられた。本当なら生きているはずなどありえないのに
全ては世界中の誰もが、死んだはずの人間が生きていることを『奇跡』だと考えているはず
でも現実はそういうことではない。『彼女』が俺たちにチャンスを与えてくれた
だからこそ『死者』にならず、今も生きていることは『彼女』がいたから
助けてもらったのならお礼をしなければいけない

「カオリちゃんは本当に大変だね」

俺はあの倉庫で死ぬはずだったのに今も生きている
生きることの幸せを分かったのだから恩返しは当たり前だ
俺はカオリちゃんの見張りを信頼できる人物に任されていることは知っているので、
すぐに病院から離れることはできる。
だがこちらの情報を提供することも大切だ。
ルミナさんにネルフの内部情報を漏らすのは危険すぎるが、
彼女に提供しないとカオリちゃんへの恩返しにならない
カオリちゃんの立場を考えるとできるだけ密かにこちらから監視されることを知らせることが必要になる
俺は『彼』に助けられたのだから、『彼女』の安全のためにはできるだけのことをする
1度は死んだ人間だからこそ、『彼女』を守る。
『彼』が俺を生きていられる道を与えてくれたのだから
だったら今度は俺が『彼女』を守る。恩返しをしなければいかない

「今の状況が続くとかなり危険になりそうでね」

俺の話に彼女は『面倒ばかりを起こしてくれるのはネルフもゼーレも変わらないわね』と発言した
確かにその通りである。問題は大きく複雑になっている。
今後の対応に関してはかなり危険になることが想定される

「カオリが再度狙われる可能性はあるの?」

「ネルフでも情報収集のために動いているけど、どんな結果になるかはまだわからない」

俺としてはさっさと捕まえて、いろいろと取り調べたいのだが連中もバカではない
彼らが最大のターゲットにしている『彼』を守るためには一網打尽にすることが求められる
小規模の集団を捕まえてもモグラたたきとかわらない
すぐに新しい芽が出てくる。摘発するのは簡単なことではない

「まさか、またカオリを利用するつもりじゃないでしょうね?」

ルミナさんが懸念しているのはカオリちゃんをデコイにしてうまく利用するのではないか
俺としてもそんなことはしたくない。したくないのではなくしてはならないのだ
カオリちゃんを守るためなら俺が必要に応じて権力乱用を行うつもりでもいる
最悪の状況になった場合、どういう展開になるかは予測できないが巻き込むわけにはいかない
そうなる前に連中を仕留めていくしかないことは俺でもよくわかっている
ネルフのトップである碇司令はどう考えているかはわからないが、
碇司令もカオリちゃんが起こした『奇跡』によって救われた
それを考慮するとそんなことになる前に摘発することはできるはずだが、
確かな確証があるわけではないことも事実であることは疑いようがない

「カオリちゃんを利用することを考えているのは限られた人物だよ」

俺の言葉にルミナさんは一部でその状況を好ましくないと考える者がいるようねと俺に伝えた
問題はミサトが黙っていることはないことを分かっているようだ

「あなた達は本当にトラブルを起こす天才ね」

「俺は彼女を守るために動いている。あの時死んだはずなのに今も生きているのは彼女のおかげだから」

俺は繰り返して言うようだが、時にはネルフよりも彼女の安全確保のために動く
俺の発言にルミナさんは信頼はあまりしていないけどといいながらも、少しは期待しているわと回答した