「誰が今回のことを仕掛けてきたかだな」

カオリちゃんを狙う人物はかなりの数になることはわかっている
ゼーレの分派が存在していることはこちらにも情報が入っている
もちろんゼーレの幹部のほとんどが逮捕されて裁判にかけられることは間違いない
カオリちゃんを狙っているのはゼーレの分派や過激派であることは想定できている
真相を知るにはかなり危険な行動をしなければいけないが、
そのようなことを今の僕で行えばまたカオリちゃんにどれほどの危険な行動をされるか

「本当に困ってしまうね」

僕はカオリちゃんを必ず守り続ける
たとえその防衛行動が法的に問題が発生するような事であってもだ
『過去』で『俺』は守らなければいけない『一線という名のライン』を踏み越えている
警察に捕まったとしてもルミナさんが何とかしてくれることはあるかもしれない
ルミナさんもカオリちゃんを守るためには『手段』を問わないで行動してくれるだろう
問題があるとするなら僕の方だ
カオリちゃんは大切な人が傷ついたことを知れば自らを追い詰めることになる
そんなことにならないようにカオリちゃんには気が付かれないように対応することが必要になる
彼女を守るためなら僕は自らのコネと人脈を利用して情報収集を行う

「カオリちゃんは知らない方が良い世界があるから、真相を知らないで生きてけるように手助けをしないとね」

カオリちゃんに負担にならないように何とかすることが求められることは多い
それにこんな言葉がある。『知らない方が幸せ』という言葉がある
真相を知らなければ狙われることは少ないはずだが、
カオリちゃんにそれが適用されるかどうかについて考えた場合ではそうなることは考えにくい
ネルフやゼーレの『真実』を知っている。それも深いほどの関係があったことは間違いない
その影響をまともに受けることになった。僕はカオリちゃんを何が何でも守らなければならない
『彼女』、いや『彼』に僕は救われた
本来なら裁判を受けて刑務所で終身刑か死刑判決を受けることになっていたけど
カオリちゃんがそれを止めてくれている。恩返しをするのは義務であると考えていた
僕が救われたなら今度は彼女を救う

「とりあえず、カオリちゃんと話でもしようかな」

カオリちゃんも少しは落ち着くことができるかもしれない
できることなら、カオリちゃんが歩む人生を穏やかな道にするにはやらなければいけないことがある。
それはゼーレがすべて掃討できない限りはカオリちゃんの安全を守ることはできない
自宅と近所との付き合いについては僕ができるだけ担当する
今はまだ落ち着いた人生を味わってほしい。海岸の町でゆっくりと暮らしていたのだから
その時のように、ここでも同じように暮らしてほしいけど簡単に進む事はない

「カオリちゃん。今いいかな?」

病室のドアをノックした時、違和感を感じた
室内に人がいる気配がない。それと窓が開いているのか風の音が聞こえる
ホルスターから銃を抜いて一気に突入したら、病室にいるはずのカオリちゃんは消えていた
カオリちゃんがさっきまでいたとされるベッドを触るとまだぬくもりがある
つまり、一瞬の隙ができた時間を狙った犯行だろう

「カオリちゃん」

これで決まりだ。カオリちゃんは誘拐された。
それがどれだけ危険なことなのかを瞬時に理解した