「あなたはなにが言いたいの?」

「碇シンジはあなたのことじゃないのって事よ」

確かに私は碇シンジだ。でも嘘をつき続けるしかない。
嘘ではない。今の私は水川カオリだ。

「今の私は水川カオリ。それが真実よ。母さん」

思わず本音が出てしまった。計画に狂いが生じる

「こんなことをして誰が得をするというの。シンジ、いえカオリさん」

「誰も得をしない。得をするのは私だけ。ユウさんは協力者。他にも協力者はたくさんいる」

それは真実ではないが、今は嘘をつくしかない。

「その協力者を使ってあなたはなにをするつもりなの?」

「碇シンジが残した遺言を実行するだけ。まずはあなた達2人をどうするかは私しだい」

「それであの子が満足するとは思えないけど」

そう思っているのは彼女だけだろう。
私にとっては碇ユイは憎悪の対象でしかない

「彼ならきっと喜んでくれるわ。サードインパクト後の地獄を見てきた彼ならね。それじゃ、私はそろそろ退散するわ」

「最後に1つだけ質問してもいいかしら」

私はその最後の質問が何なのか、なんとなく予想できた

「シンジは、シンジはサードインパクト後の世界を何故再構築したの」

予想通りの質問だった。答えはただ1つだ

「すべてを元に戻したかった。たぶんそれだけでしょうね。それじゃ、お2人とも、もう会うことはないとは思いますけど」

さようならと告げると私は部屋を出た。
1階に着くとエンジンをかけて後部座席に渚カヲルを乗せた状態で待っていたユウさんがいた

「ずいぶんお別れの挨拶に時間がかかったみたいだけど、大丈夫?」

「ええ、これでもう大丈夫よ。あとは逃げるだけね」

「そうしよう」

私達3人は第三新東京市を後にすることにした


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入ったときと同じ検問所を通って逃げる前に『積荷』を降ろす必要があった
検問所まであと数キロというところでルミナさんが路肩の避難帯で立って待っていた

「ここまでこれたってことは計画は予定通りって事かしら」

「そういうことです。あと積荷を引き取ってもらえますか。彼を積んだままだと検問所は通過できないので」

そう言って私達は渚カヲルをルミナさんに引き渡した。
彼女ならきっとうまくやってくれるだろう。

「それで碇ゲンドウと碇ユイはどうしたの?」

「第三新東京市市営住宅第22番建設職員用団地の402号室に放置してきたわ。出入口には携帯電話で作動する爆弾つきでね」

「大丈夫なの?」

ルミナさんが心配の表情を浮かべるが、私は大丈夫だといった

「爆発させるつもりはありませんから。あくまでも威嚇が狙いです」

そう、あの爆弾は室内に突入させないために設置した物。
私達が第三新東京市から出てしまえば無用の物となる

「検問所を無事に通過できたら、爆弾は解除します。もし通過できなかったらドカンですけど」

「あなたも怖い女の子になったわね」

「私だってやるときはやります。これからの将来がかかっているんですから」

「そう。それじゃ、私は渚カヲルを引き取っていくわ。もう口のテープは外しても良いかしら」

そう、まだ渚カヲルの口にはガムテープがされたままだった

「いいですよ。もう用は済みましたから」

ルミナさんは渚カヲルのガムテープを剥ぎ取ると、彼はようやく話せることに安堵したような表情を浮かべた

「これでお別れかい?水川カオリさん」

「そうよ。あと、本当の真実を話したら私はあなたを殺すからそのつもりで。それじゃ、さようなら」

私とユウさんは車に乗り込むと検問所へと向かった。
サイドミラーから手錠が外されルミナさんの車に乗せられる渚カヲルの姿を見ながら