『バカシンジを返してよ!』

「結局、あなたたちは彼を人として見ていない。ただ自分たちにとって好都合なものとしてしか見ていない。違いますか?」

『それは・・・・・・・・・・・・・・・・・』

「茶番劇はそれくらいにしましょう。どうせこの電話のことは後ろで碇ユイさんたちが聞いているのではありませんか?」

『察しが良いのね』

今度は大人っぽい女性の声が聞こえてきた

「そうでなければ私の携帯電話番号など知るはずがありませんから。それで何を聞きたいんですか。これでも忙しいんですよ」

『なぜそこまでその町にこだわるのかしら』

「静かだからです。私はこの町で出会った人々と平穏に暮らす。小さな幸せがあればそれで満足なんです」

『そのために本当の家族を捨ててもかしら』

「私の家族はこの旅館にいます。そして、この町の人たち全員が私にとって大切な人なんです。ネルフなんて迷惑なだけです」

『あなたとはもう少し話をしたいの。今度時間を作ってもらえないかしら』

「お断りします。たとえそれがどんな理由でもです。これ以上私の生活を壊さないでください」

それは心からの願いだった。今の生活を壊されることは何よりも迷惑な話だ
ようやく勝ち得た平和なのだから。たとえそれが守られた平和でも平和には違わない
静かな時間を壊されるなんて迷惑な事だ。

『なら強引にでも時間を作ってもらう事になるわ。こちらものんびりとしていると思ったら大間違いよ』

「ネルフはいつまで強権を振りかざせると思っているのでしょうか。それに私はその時はあなたたちを殺します」

迷いもなくと断言していった。私は間違いなくそうするだろう
今の私にとって大切なのはこの世界だ。この小さな町の世界こそが最も重要なのだ
それを守るためならば手段を選ばないことは間違いない

『お願い。もう1度だけ、時間を作ってもらえない?』

「ようやく勝ち得た平穏を手放したくはありません。あなた達のことを忘れていることが最も幸せなんですから」

私がはっきりとした口調で言うと相手は黙り込んでしまった

「私は会うつもりはありません。たとえこれが逃げだとしても私にはそれを選ぶ権利があります」

『では仕方がありませんね。こちらも強硬手段に出させてもらいます』

その言葉と同時に私は旅館に強盗が入ったとの大声の叫び声が聞こえてきた
私はとっさに金庫を開けて銃を取り出した。それを旅館の部屋の扉に向けて構えていると今度はベランダの方から侵入者が現れた
不意を突かれてしまって私は行動が止まった。その間に侵入者は私の口に何かの布を当てると私は意識を失った