「相変わらずの強引さですね。ネルフは」

私は椅子に手錠で固定されていた。目の前には碇ユイが立っていた
どうやらネルフの本部施設のどこかに監禁されているようだ。それがどこかはどうでも良いことだ
問題はどうやってこのピンチを切る抜けるか。それが最も重要な事だ

「あなたがもっと協力的であればここまでのことをする必要はなかったのよ」

「何度も申し上げたはずです。私はただの遺言執行人に過ぎないと。それ以上でもそれ以下でもありません」

「そのために過去を捨てるの?」

「私にとって大事なのは過去ではありません。今あの町で生きているという現実です。それだけで十分なのです」

その通りだ。私にとって大切なのはあの町で平和で暮らすこと。それだけが最大の望みであり、願いでもある
それさえかなうのであればこの第三新東京市のことなどどうでも良いことだ。
今のあの町に住んでいるみんなとの関係の方が重要だ

「あなたが私の息子だってことは分かっているのよ。シンジ」

「何度同じことを言わせるつもりですか?私はそんな名前ではありません。シンジではなくカオリです。それに男ではなく女ですから」

あなた方は誤解をし過ぎているのではありませんかととぼけるが碇ユイは押しが強いようだ。
その時、もう1人の人物が部屋に入ってきた

「ユイさん。僕と話をしても良いでしょうか?」

「カオル君。どうしてあなたが?」

「うわさ話で聞いたんですよ。カオリちゃんがここにいると」

少しいいですかと2人は私に背を向けて話を始めた。しばらくすると彼女は部屋を出ていき、カオルと2人きりになった

「ルミナさんから協力を頼まれてね。マギにハッキングして監視カメラにも細工をしておいた」

耳元でそう呟くと彼は私の手錠を外した。さらに彼はグロック17を手渡してきた。
どれだけリスクがある事をしているのか分かっているのだろうか
そして彼はこう言った。自分を殴れと。あとは自分のIDカードを使えば施設外に出ることができるとも言った

「恩を売るつもり?」

わたしはあくまでも慎重に質問をすると恩返しだと答えた。どんな意味があるのかはわからないが
今はこの好意を素直に受け取っておくことにした。

「悪いけどお腹を殴らせてもらうわよ」

そう言うと少し強めに彼の腹を殴り気絶させた。そして部屋から出ると『昔』の記憶を頼りに出口に向かっていった
その間に保安要員に見つかったが彼らにも攻撃を仕掛けて気絶させた。殺すのが目的ではない

「あと少しで出口」

そのとき目の前に2人の女性が立ちふさがった

「碇君!」「バカシンジ!」

私はとっさに銃を抜いて壁に弾を撃ち込んだ。当てるつもりはないが脅しには十分だ

「あなた達に用件はないわ!」

わたしはそういうとすぐに銃弾に驚いた2人の間を通り抜けると出口に向かった。
ゲートでカオルのIDカードを使って出るとティアさんが待っていた

「お早いご到着ね。私が助ける必要もなかったみたいだけど」