「ユイ、なぜ今になって彼女に手を出した?」

「自分の子供に会いたいと思ってしまう感情を押さえられなかったんです。例え、今は違う家庭にいる子供でも」

「だが彼女がシンジである保証はない」

私だってその事はよくわかっていた。でもわずかな望みに託したかった。そしてもう1度話をしたかった
例え無茶な方法を使ってでも。それでも会いたいと思う感情を止める事はできなかった
自分が見捨てた、いや愚かな行為に走った。そしてすべてを投げ捨ててしまったことを後悔して。
どうしても会いたかったのだ。『息子』ではなくて『娘』だとしても

「監察局に圧力をかけてくれませんか?」

「もう手遅れだ。国連の安全保障理事会から正式に苦情があった。あの町には手を出すなとな」

「ですが!」

するとゲンドウさんは強い口調で今は押さえてくれと言ってきた。あの人も本当は謝りたいのかもしれない
自分がやってしまった行為に気づいているからこそ。でもそのチャンスはもうないかもしれない事も理解しているからこそ
私を制止ししたのだろう。

「私も謝れるものなら謝りたい。だがもはや時間が経過しすぎた」

「あなた」

誰もがサードインパクトの時に起きた奇跡。それが誰によってもたらされたのかは上層部とチルドレンだけが知っている
ようやく訪れた平和な世界。世界はより良い方向に進んでいる。だが私達はその方向に進めずにいる

「とにかく、彼女には手を出さないでほしい。これは夫としてのお願いだ」

「ゲンドウさん」

「時を戻せるなら戻したい。だが進んでしまったものを戻せることはあり得ないのだ」

私はそれを聞くと執務室を出ていき自分の部屋に戻る事にした。その途中でカオル君と出会った

「カオル君。あなた、なにを企んでいるの?」

「僕は襲われた側ですよ」

「あなたが協力したことは分かっているわ。彼女が本部に出る時に利用したIDカードはあなたの物」

そう、既に保安諜報部によって調査を受けていたがのらりくらりとかわされてしまった。
だが彼が関与したことは間違いない。彼はネルフの中でも変わり者の扱いを受けている。だがそれに甘んじている
何かを狙っているのかもしれない

「僕も利用されただけです。彼女に攻撃されるとは思ってもみませんでしたから」

では失礼しますというと彼は通り過ぎていった。私は内心ではバカにしてくれていると思った
裏で何を考えているかわからないが。きっとこちらに利益があることではない。
彼にとって利益がある事なら考えているのかもしれないが