「艦長、救難信号を受信。方位240度。距離7000m」

レーダー監視をしていた精霊からの報告に俺はすぐに作業に取り掛かった。
乗り掛かった舟だ。ホワイトドルフィンの艦長である水川トオルさんと作業を分担することにした
さらに宗谷真霜さんとも無線連絡を取り救難信号のポイントに向かうと伝えた

「CICからブリッジ。救難信号ポイントに向かうよう速力最大でコースを選定せよ」

『ブリッジ、了解』

レーダーで分かるのは船の大きさぐらいだ。もう時間的にまずい時間になる。
夕暮れになれば遭難海域となるエリアになりかねないからだ。
俺たちは衛星や高性能レーダーを運用しているため問題ないが教育艦はそういうわけにはいかない
ただ、彼らにも手伝ってもらうしかない状況になってしまうことは避けたい
だが、救難を求めている人が多ければ他の多くの艦船との連携がものをいう

『はれかぜからライチへ。私達も応援に向かいます』

「ライチ、了解した」

通信を傍受していた精霊から危険ではとの言葉に、
水川トオル艦長は教育は一通り受けているはずですとの回答を得た

「良いんですか?学生の船ですよ」

「船乗りには違いない。船乗りは仲間を見捨てないものだ」

船乗り同士。通じるものがあるものなのだ

「ヘリを出しますか?」

精霊が耳元でこっそりとつぶやいたが俺は出さないと返答した
ここでトラブルの種を生み出すのはタイミング的によろしくない
今は救難作業に集中するべきだ

「艦長、ソナーに感あり。ハンマーの音と思われます」

「ソナー、絶対に聞き漏らすな。逃げ遅れたのかもしれない。救助チームをスタンバイさせろ」

了解と言うとソナーを担当している複数の精霊たちは耳にヘッドフォンを装備。
かすかな音も聞き漏らさないようにしていた

「性能が良いようですね」

「コストはかかりますが性能は折り紙付きです」

救助チームを構成している精霊たちはウェットスーツにエアボンベを用意していた
この船に搭載されている7メートル級複合艇を降ろす用意も入っていた
あまり救難信号を出している船に近づきすぎると救助作業の邪魔になることを想定。
一定の距離を開けることにした

「艦長、広域通信を傍受。宛て、ライチへとのことです」

「内容を」

内容は横須賀港に到着したら協議を行いたいと。
新参者の我々とどう関わるべきか、そこを知りたいのだろう。
予想はしていたが。合流は当分お預けとなることになる

「レーダーで捕捉。ブルーマーメイドの艦艇を2隻確認。救難信号ポイントに向かうようです」

「時間は?」

「到着予定は20分後と思われます」

それまでに救難信号を出した船が無事ならいいが。
奇跡など存在しないのだから。