その日の夜、俺は艦長室で休息をとっていた。港内なので揺れは少ない
艦内では常に銃を持った警備担当の精霊が交代で巡回し、警戒している

『トントン、艦長。起きていますか』

ドアをノックしてきたのは副長担当の精霊だ。
俺はすぐに目を覚ますと何かトラブルでも起きたのかと思った
入室を許可すると副長の精霊が入ってきた
彼女は1冊のファイルを持っていた。ラットに関する詳細な報告書が出来上がったようだ

「この情報を宗谷真雪校長にも伝えておいてくれ」

「本当にあの方は信頼できると?」

「今の我々にとって、唯一の希望だ。手のひら返しをするならトマホークミサイルをプレゼントするまでだ」

だがそんな事態にはなることはないだろう。
彼らにとってこちらの進んだ技術は喉から手が出るほど欲しいはずだ
それに宗谷真雪校長は約束を破棄するような人間ではない。
信頼できる人だ。今のところ海上安全整備局に要請して周辺警備を依頼しているくらいだからだ

「当面の間は宗谷真雪さんが窓口になってもらう」

「わかりました」

副長の精霊はそういうと艦長室を出て行った

「問題が山積しているな」

俺としては宗谷真雪さんとの友好関係は維持するべきだ。
とりあえずは休むかと思って休息タイムに入った
簡単に言えば睡眠だ。

数時間眠った後、目が覚めると俺はCICに向かった

「状況はどうだ?」

「今のところ異変はありません。衛星からの情報でも不審船舶は確認されず」

CIC統括管制官役をしている精霊からの報告に念のため警備を厳重にするように指示した

「何かトラブルですか?」

「備えあれば憂いなしというだろ。何事も慎重な対応が求められる。それと人工衛星のことなんだが、絶対に漏らすな」

「了解です」

何度も言う事だが。漏れれば大騒動になることは目に見えている
何があっても隠匿しなければならない

『ピーピーピー』

「相葉ユウです」

『宗谷真雪です、燃料などの補給についての調整をしたいのですが』

「了解。こちらの簡単なスペック情報はご理解できていますか?」

『把握しています。燃料などの補給作業は必要ですか?』

「今すぐにとは言いませんが、海上補給訓練のために沖合に出港したいのですが許可願います」

『わかりました。出港を許可します』

沖合でヘンリー・J・カイザー級給油艦から燃料の補給を受けるのだ。
こちらの世界の燃料の質が一致するかどうかわからない状態では安定したものは期待できない
確認作業が必要なのだ。さらに、補給艦に搭載されている武器や燃料などを確認しておきたい
ヘリなども総点検したいという考えもあったのだからだ

「総員、出航用意!」