その日の夜、俺はスタジアム近くにある整備室に向かった
もう、消灯時間のはずなのだが誰かが作業をしているからだ
監視カメラの映像で確認したらあの楯無の妹だった

「おい。もうとっくに寮に帰る時間だぞ」

「織斑一夏さん」

この前の爆弾と言ったが、実際は発煙筒だが。その件では彼女に負担をかけたことには悪いとは思っていた
だがこっちも仕事がある。利用できるものは何でもする主義なので

「この前は悪かったな。こっちにもいろいろと事情があったからな」

「姉さんから聞きました。いつ仕込んだんですか。発煙筒を」

それは聞かない方が花という物だと言ってごまかした。まさか勝手に部屋に入ったとは言いにくい
ましてやこんな場所で誰が聞いているかわからないような状況下では特にだ

「それで何をしているんだ?」

彼女は必死になってISの機体のプログラミングをしている様子だったが確認のために聞いた

「これは‥‥‥」

「まぁ言いたくないなら言わなくても良い。徹夜するなら缶コーヒーでも飲むか」

もらいますと言うので缶コーヒーを渡した。
彼女は本当に1人で組み上げているようだった。俺にも多少の心得はある。
束さんのところで何度かデバックをしてきたので、それなりには理解しているつもりだ
そうでなければ今持っているIS機体の整備ができるわけがない。まぁ今のところ使う予定がない事は良い事だが

「1つ聞いても良いですか?」

「何だ?質問なら受け付けるぞ」

「本当のところどうなんですか?」

私を殺そうと思ったことはあるんですかと聞いてきた。また答えにくい質問だが

「それはお前達が女性至上主義者にでもならない限りはありえないな。俺の依頼主はそういう連中から被害を受けた者ばかりだからな」

だからお前も悪人にはなるなよと言ってやった
それとこの部分が間違っているぞとプログラミングで間違っているところを指摘。
俺は早く帰るんだぞと言って整備室を出ていった

「ずいぶんと優しいんですね。一夏さんは」

「俺が優しい?冗談はやめろ」

そう声をかけてきたのは生徒会長といつも仕事をしている布仏虚だった
1年生にいるあの能天気な少女の姉だ

「でも一夏さんはわざわざ心配だからここに来た。違いますか?」

「さぁな。どう思うかはお前たち次第だ。それと楯無にこういっておけ。いつまでも逃げていると妹は苦しむだけだとな」

やっぱり優しい人ですと彼女は言うと整備室に入っていた。
俺はまったくどこまでもお節介なところは抜けないなと思いながらも巡回に入った
夜は静かだ。月も満月のようで明るい。綺麗だ。そしてIS学園は海沿いにあるため波の音がする
自然の息吹を感じられる。だが、人はすぐに壊してしまう。
それがどんなに美しく、何物にも代えられないものだとしても人は壊してしまう
ものだけではない。命だってそうだ。俺も人殺しなのだから