夕方になってもIS学園の訓練施設では多くの女子生徒が訓練していた。
だが彼らはまだ本物の戦場を知らないゆえの甘さがある様に感じられた
ISでは絶対防御があるから死ぬことはほとんどないが。生身の体で対決したら死者が出る
俺はそういう場面を何度も見てきた。殺し合いの現場はいつだってそうだ
自分が生き残るか相手を殺すかのどちらか。嫌でもどちらかを選ばなければならない
俺はいつものように訓練を眺めていてホルスターに入れている銃を抜こうとしたが

「相変わらずいっくんの気配察知はすごいね」

突然来たのは束さんだ。ちょうど彼女の妹である箒が訓練をしていた

「様子でも見に来たんですか?」

「そんなところだよ。ところで、今夜はお仕事だって聞いたよ」

そう、今夜は仕事だ。依頼料はたっぷりともらっている。女性至上主義者の幹部だ
消すように依頼された。

「殺してほしいと。かなりの悪い人であることは事実なので。それが何か?」

「いっくん。どうしてもやるの?」

「契約ですから」

束さんはため息をついた。呆れているのかもしれないが。女性至上主義者は嫌いだ
俺は男性至上主義も認めるつもりはないが公平な社会であれば良いという考えだ

「もう1つ契約をしない?」

「だめです」

すでに契約をしているのに別の契約をすれば履行できない可能性がある
それに束さんの言ってくる願いが何となくわかってきた。きっとISを使えというのだろう
もしそんな願いなら、俺は確実に学園から姿を消すことになる
あんなもののせいで俺は苦しめられているのだから。確かにココさんの言うとおりだ
ISを持ちながら嫌っている。これがどれだけおかしい事かは分かっている

「契約の内容も聞かないのでどうして断るの?」

「束さんは俺にIS学園に入れって、言いたいんじゃありませんか。憎むべきもののところに行ったらすべてを殺すしかない」

「いっくん」

「俺がここにいるのは契約だから。箒の様子を見るという名の」

それに今更俺が目の前に現れるのも嫌な物だろう。この血にまみれた俺に近づくことなど
俺の手には数多くの血塗られた跡が残っている。だからなのかもしれないが俺は人と仲良くするつもりはない
仲良くなり過ぎたら、いつか的になった時に情が出てしまう。俺はこれでもプロだ。アマチュアとは違う
できるだけ距離を置いた方が良い。迷いなく殺せるから

「いっくん。そこまで」

「もう決まっている事ですから」

俺はそう言うと警備のために巡回に戻った。
今は平和かもしれないがいづれは大騒ぎが起きるような気がしていた
ココさんから得られた情報によるとある組織が介入したがっているとの情報が入っていた
引き続き調査を依頼するためにお金は払っている。この学園の安全を守るためなら多少の出費は仕方がない

「何もなければ良いが」