夕方になって俺は夕食を取るために食堂に向かった
生徒たちの話題はもちろん今日の暴走事故だ
ラウラ・ボーデヴィッヒの機体暴走事故がVTシステムによるものであることはすでに周知の事実だった
外部に漏れるのは防ぐ事はできても人の口までは塞ぐ事はできない
多少の情報漏れは仕方がない事だ。こうなる事を狙っているのが亡国機業なのだから
彼らにとってはISは男女平等を目指す組織としては邪魔な存在だ

「一夏、噂になっているぞ。お前がISのコアを撃ち抜こうとしたと」

箒が近づいてくるとそんなことを言ってきた。まったく抜かりの無いやつだ
楯無は。いろいろと攻めてきて俺を兵糧攻めにでもしようとでも思っているのか
あいつもこういったらあれだが、ひねくれものだ

「箒、ISの絶対防御を破れる弾なんかないだろ。そんなものがあったら今頃大騒動になっている」

俺は表向きの理由だけを話してが、実際はその弾が存在することを認めるわけにはいかない
もし存在すればIS学園で面倒な事になる。俺としてはそんな状況は好ましくない
契約で箒は守る事になっているが安全は保証できないからだ

「そんなうわさを信じるなんてお前らしくないぞ」

俺はそう言うと夕食を取る事にした
いつものように、いつものメニューの定食をとる。
俺は食堂の全般が見やすい位置に座り食事を取り始めた
いくらここの窓が防弾だと言っても危険がないとは言えない
いつ何があるかわからないからこそ、それを想定するのが仕事だからだ

「まったく、苦労するな」

俺は食事をしていると千冬姉が来て俺のそばに座った

「一夏。束と話をした」

「束さんは何か話したのか?」

「あいつ、お前のことでは何も話せないと」

そう、契約する前に約束したのだ。俺のことについては一切触れないように
余計な事で仕事に関して邪魔されたくないからだ

「一夏、お前は今後どうするつもりなんだ?」

「千冬姉。もう俺に構うのはやめてくれ。その方が千冬姉を傷つけなくて済む。もう忘れてくれ」

俺はそう言うと食事を終えて席から立ち上がろうとした

「一夏!」

俺は千冬姉の言葉に振り返りたかったが、それを許されない事はもう分かっている
俺はもう汚れすぎている。汚い世界で。一度でもはまってしまってはもう抜ける事はできないのだ
暗黒の世界で生きている俺には千冬姉はまぶしすぎた。
俺なんかをもう切り捨ててほしい。前を向いて生きていってほしいのだ

「一夏さん、どうしてあんなに頑ななんですか」

「布仏虚。お前には関係のない事だ。それに俺は今非常に機嫌が悪い。鉛弾を食らいたくなかったらさっさとどけ」

俺はそう言うと食堂を出ていった。警備室に戻ると愛用のオートマチック銃を分解して整備をした
手抜かりがあってはいけないからだ。ちなみに銃は2丁持っている。1丁はオートマチック銃のグロック17。
もう1丁はリボルバーのS&W M686だ。オートマチック銃が使えなくなった時に備えてリボルバーを持っている
いつものように整備を終えると俺は仮眠をとるために仮眠室に向かった
もちろん無線と携帯端末の電源は入っている
緊急時には即座に対応できる